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巨人、大量16人「戦力外通告」の真相 原辰徳監督の戦略と台頭する“第7世代”の実態とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/11/13 17:03
9勝を挙げる活躍を見せた入団2年目の戸郷。巨人の軸を担う存在となることが期待されている
育成枠出身の山下航汰も新しい波の発信源
ヤクルト戦ではリリーフ陣が打たれてプロ初勝利は逃したが、左腕から切れのある真っ直ぐにカーブ、スライダー、チェンジアップに、フォークと変化球も多彩だ。
「マウンドさばきも堂々としているし、さすがに甲子園の大舞台を経験してきた投手という感じ。一軍で力を発揮するタイプだと思いますね」
こう語る原監督の評価通りに育てば、来季は一軍での活躍が期待されることになる。
しかも大事なのはこの“第7世代”には野手でも育成枠で入団してホープと期待される山下航汰外野手が名を連ね、確かにチームの新しい波の発信源となっているということだ。
この波に刺激されたように投手では高卒4年目左腕の大江竜聖投手がサイドスローにフォームを変えて中継ぎとして台頭。野手でもこちらは大卒4年目だが吉川尚輝内野手がようやく二塁の不動のレギュラーへと手をかけ、育成上がりの松原聖弥外野手も出てきている。
また3年目の田中俊太、若林晃弘、北村拓己、湯浅大らの内野手に岸田行倫捕手らもこの2年間で一軍の舞台で活躍の幅を広げてきている。
育てるために、勝つことに目を瞑ることはできない
こうした若手の出現を生かすためにも、チームの新陳代謝を活発にする必要がある。このオフの巨人の選手の大量入れ替えの背景には、そんな思惑があった訳だ。
坂本や岡本、丸が元気なうちに若手を育成し、チームの土台を再構築していく。そのスタート台に来季の巨人は立つということだ。
ただ、である。
巨人の場合は育てるために、勝つことに目を瞑ることはできないというのもまた事実だ。
だからこそせっかく若手が育ってきても、補強の手は決して緩めない。
それもまた巨人なのである。
今オフの動向が注目されるヤクルト・山田哲人内野手はともかく、今年ももちろんFA戦線には参加することになるだろう。
「選手を育てるためには、補強は必須である」――この原監督の哲学をもとにこのオフの巨人は動く。