“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鎌田大地は「やっぱり掴めない」。
東山高時代の覚醒と葛藤、そして今。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/04/22 11:00
東山高校時代の鎌田大地。当時から抜群のテクニックで異質な存在感を放っていた。
自信を得たベルギーでの1年。
フィジカルを重視するブンデスリーガにおいて、一見“中途半端”に映る才能には出場機会が訪れず、2年目となる2018-19年には就任したばかりのアディ・ヒュッター監督から事実上の構想外の扱いを受けた。
たが、ここでも鎌田はぶれなかった。
レンタル先のシント・トロイデンでは、主に2トップの一角として起用されたことで持ち前の得点感覚が爆発し、ゴールを量産。バイタルエリアを息を潜めるように漂い、攻撃のスイッチが入った瞬間に相手のマークの歪みに最短距離で潜り込んで、パスやクロスを引き出すと、正確なファーストタッチでコントロールしシュートやラストパスを繰り出す。ベルギー1部リーグの日本人最多得点数となる15ゴールを含む、公式戦36試合で16ゴール9アシストというキャリアハイの数字を叩き出した。まさに高校時代や鳥栖で見せた彼の持ち味が最大限に発揮されているように感じた。
この1年間で「結果を出す」ことへの自信をつかんだ鎌田は、復帰したフランクフルトでも快進撃を続ける。
現在の主戦場は4-3-3の右ワイドだが、張りっぱなしのウィングではなく、ヒュッター監督は積極的に中央のポジションに入り、シャドーの動きも求めている。一時は干していた鎌田を、この役割の適任者と捉えたのだった。
ヨーロッパリーグ初ゴールとなったアーセナル戦での左足シュートは、視野の広さからくるオフ・ザ・ボールの動きの質、クロスとシュートの両方の選択肢が生まれる場所にボールを置く技術、そして正確なシュートを放つ技術と、彼の能力が凝縮されたゴールだった。
目標は高校時代から変わらない。
振り返れば、鎌田はいつも逆境のスタートばかりだった。
器用であるがゆえ、扱われ方次第では、特徴が消えることもあった。ただ、それでも今輝けるのは、彼が不断の努力で自らが持つ「独特の間」が唯一無二であることを周囲に証明し続けてきたということだろう。
「チャンピオンズリーグで優勝を争うようなチームで活躍したいし、W杯に出て活躍したい」
高校時代に抱いていた強い想いは今も変わらない。むしろ現実味を帯びた目標として彼の目に映し出されている。日本が誇るセカンドストライカーの躍進を、これからも見つめていきたい。