“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鎌田大地は「やっぱり掴めない」。
東山高時代の覚醒と葛藤、そして今。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/04/22 11:00
東山高校時代の鎌田大地。当時から抜群のテクニックで異質な存在感を放っていた。
ゴールを意識させた福重監督。
福重監督のもとでハードワークと身体の使い方を学んだことで、アタッキングサードとミドルサードを行き来できるようになり、パスのバリエーションが増えた。フィジカルの成長が著しくなると、福重監督はさらに鎌田に得点を求めるようになった。
「1本の重みというか、パスにこだわりがあるのは変わりませんが、やっぱりゴールという結果を出さないと周りに評価をされないんです。1年の時に多くの上級生の人たちが試合に出られないのに僕が出て、重要な試合でシュートを外してしまった。ゴールを決める、決めないで周りの人たちの思いに応える、応えられないという大きな差になることを痛感したんです。なので、パスを大切にしながらも、狙えるところは狙うようになりました」(鎌田)
両足から放たれるミドルシュートや裏に抜け出す動きでゴールを量産。シュートを警戒され始めたことで、DFの裏を突く得意のパスの質も向上した。また多くのポジションをこなしたことで、課題だった守備面も向上した。
得点を決めて、アシストもできるという現在のプレースタイルの礎は、この1年で確立されたと言っても過言ではない。
うまいけど、特徴がわかりにくい。
当然、Jクラブもそんな逸材を見逃さない。鎌田の元には複数の練習参加要請が届いた。
しかし、彼がプロ内定を勝ち取ったのは高3の11月。他の注目株が夏を前に内定が決めていたのに対し、鎌田は明らかに遅かった。言い方を変えれば、獲得までに至る査定で、なかなか評価を勝ち取れなかったのだ。
冒頭で少し触れたように、鎌田は高い技術を持ちながらも特徴が見えにくいタイプの選手である。いわゆる、わかりやすい言葉で括ることは実に難しい。泥臭い点取り屋でもなければ、スピードあふれるウインガーでもない。パサーにしては、得点の匂いを強く感じる。部類としては“万能型”になるのだが、1つ1つのプレーに「独特の間」を持った不思議な存在だった。
彼を追うスカウトとしても、彼を評価するときにこの違和感をポテンシャルと見抜くか、中途半端な選手と取るかによって大きく評価が変わってくる。ストライカーでもない、ゲームメーカーでもない、あくまで「セカンドストライカー」である彼は、戦力的に計算しにくい存在だったのだ。
しかし、彼に心の底から惚れ込んだ1人のスカウトがいた。