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浅野拓磨が高校生90人に語ったこと。
「誰よりも自分に一番期待して」

posted2020/06/10 11:30

 
浅野拓磨が高校生90人に語ったこと。「誰よりも自分に一番期待して」<Number Web> photograph by Takahito Ando

新潟明訓高校のリモートミーティングにゲストとして招かれた浅野拓磨。自身の経験をもとに高校生たちへメッセージを送った。

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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Takahito Ando

 東欧の国から嬉しいニュースが届いた。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で中断していたセルビアリーグが再開した5月30日、名門パルチザン・ベオグラードでプレーをするFW浅野拓磨は、いきなりゴールラッシュを見せた。

 リーグ戦第27節のムラドスト・ルチャニ戦でいきなり先制ゴールの起点となると、19分にはワンツーで抜け出し、飛び出してきたGKを冷静に見極めて決勝弾となるゴールを叩き出した(チームは4-1で勝利)。その4日後のカップ戦準々決勝FKラドニク・スルドゥリツァ戦でも、前半アディショナルタイムにスルーパスから抜け出し、公式戦2試合連続ゴール。さらに後半アディショナルタイムには追加点もマークし、チームの準決勝進出に大きく貢献した。

 実はこの活躍に勇気と感動をもらっている高校生たちがいた。

 リーグ戦再開を1週間後に控えていた5月23日、浅野は新潟明訓高校サッカー部のリモートミーティングにゲスト講師として招かれた。

 新潟明訓は選手権6回出場、インターハイ7回出場を誇り、プリンスリーグ北信越を2度制した強豪校だ。しかし、今年はインターハイがなくなり、プリンスリーグ再開の目処も立っていないという状況。浅野は難しい時間を過ごす高校生たちに、自身の自粛生活を振り返りながらエールを送った。 

1回のサボりが未来に影響する。

「ベオグラードは日本より3週間くらい早くロックダウンになりました。平日の朝5時から夕方の5時までは外出できましたが、それ以外は自宅待機。グラウンドは使える状態ではなかったので、室内トレーニングを徹底してやっていました。もともと1人でトレーニングをやる時間は集中できて好きなんです。それに自分がさらなる成長を求めてすることを人前でわざわざする必要がないかなと。誰にも見られていない自分の世界で黙々とやることが一番集中できる。

 もちろん朝起きた時は『今日もこれやらなあかんのか』と正直嫌なんですけど、僕はその『嫌だ』と思うことに挑戦することが好きなんです。ちょっとめんどくさいなと思っても、それはその瞬間の感情であって、何のためにやっているかというと、『その先』があるからです」

 この日、リモートミーティングに参加したのは1~3年生の約90人。彼らが見つめる中、浅野は言葉を丁寧に紡ぎ出していった。 

「この新型コロナウイルスによる自粛期間が明けたとき、自分がどの位置にいることを求めているのか。何年か先のことを考えた時に、今この一瞬をサボったことが影響してくると思います。正直、そこでやめちゃう人は『いやいや、そんなたった1回くらいで変わらない』と思ってしまうんです。どちらかと言うと、そう思う人のほうが多いと思う。でもそれができる少数の人だけが上に行けし、望んだ自分になれる印象があるんです。その集団がサッカーにおける日本代表だと思います。なので、僕は日本代表に行くとすごく大きな刺激をもらえるんですよね」

 誰も経験したことがない未曾有の状況下、なかなか日常の意義や目標を見出せずに悩んでいる学生は多いだろう。だが、浅野は目先のことではなく、将来をしっかりと見つめて顔をあげてほしいというメッセージを送った。

【次ページ】 将来の自分を想像して逆算する。

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