熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
本田圭佑ブラジル移籍の仕掛人激白。
「4年越しの悲願」と交渉の舞台裏。
posted2020/04/13 20:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Marcos Leite
「フットボールの世界では、何が起きるかわからない」とは、よく聞く言葉だ。
それでも、こんなことが起きるとは思わなかった。それが実現する前日まで――。
本田圭佑のボタフォゴ入りの可能性がブラジルで初めて報じられたのは、1月23日。地元ラジオが「ボタフォゴ幹部が、元日本代表MF本田圭佑と接触がある代理人マルコス・レイチ氏と会合を持った」と伝え、日刊紙が「ボタフォゴ関係者が本田への興味を認めた」と報じた。
これらのニュースを聞いて思ったのは、「絶対にない」。
ボタフォゴは、ブラジルの12大クラブの1つだ。しかしよく言えば“古豪”、悪く言えば過去の栄光にすがるクラブで人気、実力ともに下り坂。財政状況が極めて悪く、累積赤字が約7億レアル(約143億円)で国内クラブ中最多とされる。
昨年末にフィテッセ(オランダ)を退団した本田に移籍金が発生しないのはわかっていたが、給料が払えるとは思えなかった。「ボタフォゴは別のMFに興味を示しており、必ずしも本田獲得に乗り気ではない」という報道もあった。
摩訶不思議な日本語で熱烈歓迎。
ところが、ここから事態が意外な方向へ転がる。
本田圭佑入団の可能性を察知したボタフォゴ・ファンが、本田のインスタグラムとツイッターに「ぜひボタフォゴに入ってくれ」というメッセージをポルトガル語、英語、翻訳ソフトを使ったと思われる摩訶不思議な日本語で大量に送りつけた。
さらに26日、ファン有志がツイッターに「#本田さんボタフォゴに来て」(日本語)を立ち上げると翌日、これがブラジル国内のトレンド首位となった。
結果的に、このボタフォゴファンの熱い反応が本田の心を揺り動かし、ボタフォゴの本田獲得への意欲を劇的に高めたのだが、当時の僕はそれを知る由もなかった。「ファンが少々騒いでも、無理なものは無理」と高を括っていた。