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鹿島と広島、何が勝負を分けたのか。
永木「理想ばかり求めても仕方ない」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/06/26 11:50
鹿島アントラーズの「勝負強さ」がまたしても際立った試合だった。選手は入れ替わっても、トーナメントの勝ち方は伝承されている。
退場者を出しても、広島の攻勢は続く。
勢いに乗る広島はDFラインを高く保ち、GKの中林洋次もゴールエリアより前に立っていた。押し込んでいる状態の広島だったが、鹿島のカウンター攻撃で思わぬ事故が起きる。飛び出した土居と1対1となった中林が失点は防いだものの、そのプレーで退場することになったのだ。
中盤の吉野恭平に代わり、GKの林卓人がゴールマウスに立った。
80分、鹿島陣地のぺナルティエリア内でパトリックが倒れ、PKかと思われたがノーファールの判定。その直後、柏好文が右サイドから倒れながらあげたクロスに反応してパトリックがゴールネットを揺らしたものの、柏にシミュレーションのジャッジが下され、ノーゴールに。広島の長い抗議が続くも判定は変わらない。
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1人少ない状況でありながら、その後も広島の猛攻が続く。88分、鹿島は遠藤康に代えて、小田逸稀を投入。小田に与えられたタスクは、「柏選手をマンマークすること。ハーフタイムに監督から、そういう状況があるかもしれないと言われていたので、準備はできていた」と小田が話す。
指揮官は出場機会の少ない20歳のSBに、明確な仕事を与えた。この日、ベンチに座った守備的な選手は小田と関川だけだった。スンヒョン退場のアクシデントでもプランを変えなかった理由がこの交代にあったのかもしれない。
土居のゴール、パトリックのPK。
それでも鹿島の劣勢は変わらない。
時計の針は87分から88分を指していた。抗議などもありアディショナルタイムは長くなることが予想された。
広島GKの林がCKのチャンスでゴールマウスを離れ、攻撃参加。ひとり少ない状況であと1点という判断が彼を動かしたのだろうか。
しかしそのCKを守り、奪ったボールから鹿島がカウンターをしかける。レオシルバからのパスを土居が受ける。
「GKが走って戻ってくるのが見えて、『そういえばセットプレーで上がっていたな』と思った。それでゴールが見えたから蹴った。倒れながら、『入ってくれ』と思っていた」
倒れ込みながらも放ったシュートがゆっくりとゴールに吸い込まれて、鹿島のアウェイゴールが決まる。その時点で2-2の同点だったが、広島が勝ち抜けるためには、さらに2点を奪うことが必要になった。
アディショナルタイム5分が表示される。
そして試合終了間際、再びPA内で倒されて得たPKをパトリックが決めて、3-2になったところで試合終了の笛が鳴った。