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鹿島と広島、何が勝負を分けたのか。
永木「理想ばかり求めても仕方ない」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/06/26 11:50
鹿島アントラーズの「勝負強さ」がまたしても際立った試合だった。選手は入れ替わっても、トーナメントの勝ち方は伝承されている。
三竿「勝ち上がれたことが大事」
「アウェイゴールを与えず、アウェイゴールを獲れたというのが勝因だと思う。僕個人的にも今日はよくなかった。そういう中でも勝ち上がれたことが大事。みんなが自分のやりたいプレーとかを押し殺してまでも、チームのため、勝ちあがるために力を尽くすというのがこのチームだと思う。もちろんこの試合は負けてしまいましたし、課題や修正点もある。でも、成長するための材料が見つかった試合だった」と三竿。
不慣れなポジションでも、急な起用であっても、調子が悪くても、やるべきことをやりきる。
前半には、広島のボール保持率が75パーセントに迫る時間帯もあった。攻撃機会がわずかでも、鹿島はそれを仕留めた。たとえ結果論だとしても、結果がすべてのチームだから、結果にこだわる。
守備に回る時間が長くなっても、わりきってその状況を受け入れた。そして少ないチャンスをものにした。
理想ばかりを求めない、という思想。
永木はいう。
「押し込まれる状況をしっかり耐えて、その展開で1得点できた、その流れは自分たちの得意な形だし、それができるのが鹿島だと思っている。
確かに理想はもっと攻撃チャンスを作ることだし、敵陣でボールを回すこと。でもサッカーは相手のいるスポーツだし、相手だってやらせないと守っている。そう簡単じゃない。
理想ばかりを求めても仕方がない。去年のACLでの経験は、僕らのアドバンテージだと思っていた。こういう戦い方に自信をもって、プライドを持ってやっている」
苦しい戦いだった。「もう少しチャンスが作れれば楽になれたのでは?」と気安く訊ねたこちらの言葉を永木は強い口調で一蹴した。
「理想は攻めて疲れないで戦うことだろうけれど、でも、そんなに甘いものじゃない。ACLでベスト8へ進むのは、鹿島でもなかなか簡単にできなかったこと。今回もその難しさを理解し、そういう気持ちで戦っている。いろんな反省点があるけれど、次のラウンドにすすめたことは素直に喜んでいい」