プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“井端弘和師匠”に学んだ山本泰寛。
巨人で光る文武両道の慶応ボーイ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/05/05 13:30
4月中旬の阪神戦。二塁の守備時、軽快なフットワークから華麗なジャンピングスローを見せた山本泰寛。
ほぼ1人で1点もぎ取ってきた男。
吉川の抹消直後の4月16日に一軍登録されてその日の広島戦に先発出場すると、2安打2得点の活躍。特に6回には右前安打で出塁して菊池保則投手の暴投で一気に三進、小林誠司捕手の振り逃げ暴投で生還と相手のミスにつけこんで、ほぼ1人で1点をもぎ取ってみせた。
「この状況の中で、彼の力が必要だというところで良いプレーをしてくれました」
試合後に指揮官がこう絶賛したように、吉川離脱のピンチを逆にチャンスとして、山本は原監督に強烈な印象を植えつけたのである。
その後も「8番・二塁」で先発した21日の阪神戦では1点リードの7回2死で阪神先発の西勇輝投手から左中間を破る適時三塁打。同じく「8番・二塁」で先発した27日のDeNA戦では2回の第1打席で中前適時打を放つと4回には井納翔一投手の内角147キロにバットを折りながら左前タイムリー。
「非常に成長の跡が見られますね。甘いボールではないボールをヒットにできている。1打席目も彼(井納)のウイニングボールでしょ。2打席目もインサイドのね。そこに価値がある」(原監督)
そうして5月4日の広島戦で行なった打線の組み替えでは「2番・二塁」と新しい場所を手に入れるまでに至ったのである。
文武両道を誇った子供時代。
「不安なので毎朝、起きたらすぐにバットを振る。感覚は日々違うので、そうやってバットを振ることで『今日は体調が良さそうだ』とか『今日はキレが悪い』と自覚できるんです」
子供の頃からコツコツと努力を積み重ねることが、決して苦手ではなかった。
東京の下町・台東区根岸の出身で荒川区立諏訪台中学時代には世田谷西シニアで投手として全国制覇も達成したが、勉強もできた。中学時代の5段階評価による全9教科の合計点は42点(45点満点中)。高校は自己推薦のAO入試で偏差値76(2018年度ランキング)の神奈川の名門・慶應義塾高校に進学したが、おそらく一般受験でも受かったのではないかと言われるほどの好成績だった。