プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“井端弘和師匠”に学んだ山本泰寛。
巨人で光る文武両道の慶応ボーイ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/05/05 13:30
4月中旬の阪神戦。二塁の守備時、軽快なフットワークから華麗なジャンピングスローを見せた山本泰寛。
ドラフト5位入団の興味深い理由。
慶応高校で投手から内野手に転向。甲子園大会の出場はならなかったが、慶應義塾大学に進学すると1年春のリーグ戦から出場し2年生でレギュラーに定着。4年生の秋には3本塁打を放ってベストナインにも選ばれている。
「決してすごい選手ではないですけど、バッティングに小力があって、肩も強かったのでショートができる」
ドラフト5位で巨人に入団した当時のスカウトの評価だ。
大卒で5位という順位が端的に表すが、バリバリのレギュラーを期待されて入ってきたわけではない。
技術的にも決してスイングスピードが速いわけではなく、むしろバットのヘッドがなかなか出てこない。ただバットをボールに当てるのが上手いので、ファウルで粘ることができる。そうして相手のミスショットを仕留めるというのが基本スタイルだ。
井端を「師」と仰いでいた山本。
ただ山本には考えて努力ができる才能がある。
「まあほんと全てが平均点の選手。レギュラーをとるにはこれっていう凄いものがないとダメだけど、まだどれも平均なんです。ただ、いまのチームが求めている役割をこなせる選手という意味では貴重だと思いますよ」
ちょっと手厳しいコメントを語るのは昨年まで内野守備走塁コーチとして山本の指導をしてきた井端弘和さんだった。
手厳しいのには理由がある。
まさに山本は井端さんを「師」と仰ぎ、オフの間にはそれこそ井端さんの自宅に通ってマンツーマンで技術だけではない、野球選手の何たるかを教わってきた間柄なのである。
そんな井端さんも山本の成長を認める1人だ。
「井納から打った1本目ですね」
こうして指摘したのは27日の試合で井納の外角スライダーを中前に運んだ安打だった。