“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
首を振り続ける男・喜田拓也。
今のマリノスに必要な「深み」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/04/10 07:00
アンカーのポジションで存在感を発揮する喜田。快勝した浦和戦のプレーは「深み」を増していた。
ピンチを未然に防いだインターセプト。
「興梠選手までの距離は遠かったけど、ロングボールが比較的ふわりとしていたので、全力で戻れば追いつけると思った。同時にチアゴも戻りながらのヘッドになるので、飛距離は絶対に出ないし、(興梠選手を)超えるボールにはならないと思った。それに興梠選手もそれを理解した上でのポジションを取っていたので、トラップ際を狙うしかないし、トラップをしてくれたら追いつけると確信できた」
全速力で興梠にプレスを仕掛けた。
喜田の狙い通り、興梠は胸でワントラップをした。右に持ち出した瞬間に、背後から興梠とボールの間に身体を差し込み、インターセプト。完全に死角からボールを奪われる形となった興梠が驚きの表情を浮かべる中、喜田はすぐに左サイドバックの広瀬陸斗にボールを繋いだ。
涼しい顔で淡々とやってのけたプレーだが、このプレーはまさにチームのピンチを救ったビッグプレーだった。
チアゴがヘッドをした時、DFラインの前にできた広大なスペースに、フリーの興梠とMFエヴェルトンの2人に侵入を許していた。だからこそ、ボールを奪った瞬間、チアゴは大きな賛辞を喜田に対して拍手で示した。
「物凄く責任がある役割」
「僕が前に出て空いたスペースに何回か興梠慎三選手が入ってこようとするシーンがそれまでにあったので、『このスペースを狙っている』とわかっていた。あの時もロングキックがでる瞬間に、興梠選手の存在にすぐに目を向けることができた」
このプレーがなければ、1-1の同点になる可能性もあった。まさに勝利の分岐点といえるシーンであった。
「自分の感覚として、ここで追い込めるとか、ここで奪えそうだなと感じたら、アンカーのセオリーの持ち場を離れてでも行く。ポジションを守ることが大事な時と、ポジションを離れるのがベストの時の両方がある。どちらかを選択したとしても、次の瞬間にもう一方の選択に切り替えないといけない時もある。
ちょっと間違えれば、攻守に大穴が開いてしまうデリケートな部分。それによって戦況が変わってしまうこともあるので、物凄く責任ある役割だと思っています」