“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
首を振り続ける男・喜田拓也。
今のマリノスに必要な「深み」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/04/10 07:00
アンカーのポジションで存在感を発揮する喜田。快勝した浦和戦のプレーは「深み」を増していた。
喜田の「深み」は劇的なものではない。
試合後のミックスゾーン。
8年前と変わらない、明快な受け答えをする喜田の後ろを、チームメイトが通る度にちょっかいを出してくる。それに対し、喜田もきちんと一旦受けてから、受け答えに戻る。これも8年前と変わらない。だが、ピッチ上の喜田の凄みは確実に増した。
「どうしてもこの世界はイメージで語られてしまうことも多いので、僕は守備的な選手と世間では見られていると思う。もちろんそれを特徴としてやってきた自負はあります。……ただ、攻撃やビルドアップに関しては、1年目から自分に必要なものとしてコツコツ積み上げてきたんです。ちょっとずつかもしれないけど、成長して、前進して、やっと試合の中で出せる回数も増えてきて、手応えも感じている。
だからこそ、これからも自分が物事の本質を見て、何ができて、何ができていないか、冷静に分析をして、コツコツ取り組んでいく。この姿勢を貫き、積み重ねていることが、ちょっとずつですが、前進している要因かなと思っています」
今年に入って劇的に変化をしたわけではない。自分を変えたわけではない。着々と積み上げてきたからこそ、今がある。
マリノスにとって、ポステコグルーサッカーにとって、最も重要な喜田「深み」は、こうした地道な積み重ねのもとに成り立っている。
マリノスで長期熟成された「喜田拓也」という銘柄のプロフットボーラーは、気品ある甘美な味わいでピッチに信頼と安心感を与えている。