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強さと脆さが同居したACL逆転劇。
鹿島が勝ち続けるために必要なこと。
posted2019/04/10 11:45
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
AFLO
またしても「鹿島らしい」勝利だった。
2点リードを許し、1点を返したものの、犬飼智也が2度目の警告を受けて退場。そんな劣勢にありながら、アディショナルタイムで2得点をあげて逆転で勝利した。
4月5日の名古屋戦でも、終盤の逆転弾で勝利したばかり。ピンチを凌ぎながら勝ちきる勝負強さをACLの舞台でも見せつけた。
4月9日、ACLグループリーグ第3節、韓国・昌原で行われた慶南対鹿島戦は、冷たい雨と強風の悪天候のなかで始まった。時計の針が進むにつれ、風は鹿島陣地へ向け、さらに強く吹いた。追い風に押されるように慶南の勢いが増す。
マイボールにしてもボールが収まらず、攻撃のリズムが生まれない。ボールを失いカウンター攻撃にさらされることで、鹿島自身が試合を難しくしているような印象が残った。
「むちゃくちゃやりにくかった。ピッチもそうだし、連係もそう。選手間の距離とか小さなことがうまくいかなかった」と安部裕葵が振り返る。
「僕らは早めにクロスを上げることを意識していたけれど、相手のプレッシャーも早くて、アタッキングサードまでボールを運ぶことができなかった。ちゃんと回して崩そうという意識が強くて、イージーなミスもあった。もっとシンプルに戦えていれば簡単な試合になったと思う。天候プラスこの雰囲気。シンプルにやられることが一番やっぱり苦しかった」と安西幸輝も話す。
伊藤、土居は帯同すらせず。
中盤から前の5人が、名古屋戦の先発から入れ替わっていた。負傷から復帰し出場時間を伸ばしている段階の三竿健斗とルーキーの名古新太郎。安部と遠藤康、そして金森健志も今季の出場時間は短い。
Jリーグとは違う難しさがあるACLのアウェイ戦での大幅なターンオーバーには当然リスクも伴う。それでも伊藤翔、土居聖真は帯同させなかった。14日にはJリーグ上位進出のために落とせない大一番、FC東京戦が控えている。温存も重要な決断だった。
同時にJリーグで出場機会の少ない選手にチャンスを与えることは、チーム力を上げるうえで欠かせない。勝ったとはいえ、名古屋戦の内容は芳しくはなかった。大幅なメンバー入れ替えは、その流れを変えるきっかけになるかもしれない。
そして名古屋戦で、慣れない右サイドバックとして先発したものの不本意なプレーしかできなかった平戸太貴を続けて起用したことに、大岩剛監督の選手に対する愛情を感じた。