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独自の応援スタイル確立を!
平成最後のセンバツで見えたこと。 

text by

梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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photograph byYukiko Umetsu

posted2019/04/04 17:30

独自の応援スタイル確立を!平成最後のセンバツで見えたこと。<Number Web> photograph by Yukiko Umetsu

地元色を前面に出した春日部共栄の応援席。生徒たちがかぶっていた麦わら帽子は春日部市の特産品だ。

春日部共栄の「埼玉らしさ」。

 映画『翔んで埼玉』の主題歌『埼玉県のうた』を繰り出してきたのは、春日部共栄(埼玉)。こちらも吹奏楽コンクール全国大会常連の名門だ。アルプススタンドで野球部員に採用理由を聞いたところ、「埼玉らしさを出したかった」とのこと。

 野球の応援歌は、替え歌にして歌うことが多い。たとえば定番人気曲の『狙いうち』(山本リンダ)でいうと、「この世は私のためにある」の部分を「お前が打たなきゃ誰が打つ」といった具合だ。しかし、『埼玉県のうた』は、「だんだ、だ埼玉~!」と、あえて元の歌詞にこだわり、野球部の野太い歌声による「だ埼玉」がアルプスにこだました。キレのある振り付けとともに全力で歌う彼らの姿を間近で目にし、たしかにこれは、埼玉県代表にしかできない応援と感じた。

 他にも、春日部市が舞台のアニメ『クレヨンしんちゃん』の主題歌『オラはにんきもの』も初演奏するなど、5年前、夏の甲子園に出場した時よりも「埼玉らしさ」がはるかに増していた。

郷土色が新鮮だった習志野。

 郷土色といえば、習志野(千葉)も負けていない。代表曲の『レッツゴー習志野』や『ベン・ハー』などが有名だが、習志野市の市民祭りで踊られている『きらっとサンバ』や、千葉テレビ放送(チバテレ)で放送されている子ども向け番組『チュバチュバワンダーランド』の楽曲『ロックン★チュバ』を取り入れている。

 県内でおなじみの曲が甲子園で流れると、地元民はうれしいだろう。郷土色のある応援というと、古くから地元に伝わる民謡などが多いが、春日部共栄や習志野のように、新しい形の郷土色も新鮮に感じた。

 今回、何かと話題になった習志野の応援だが、高野連関係者に感想を聞いたところ、「生徒たちを見ていると、一般的な吹奏楽部とは肺活量が違うように感じます。そして高音がよく響く。一人ひとりの演奏力が高いので、全員がまとまるとあんなにすごい音になるのでしょうね」と話していた。

 ネットでは「相手の攻撃時にも演奏してうるさい」といったコメントが散見されたが、そもそも自校の守備時にも演奏出来たのは昔の話。現在は規定で禁止されており、習志野はもちろんのこと、全ての学校が守備時は一切演奏していないことを明記しておきたい。

【次ページ】 オリジナルの市立和歌山、部員も「誇りに思う」。

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