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トーレスは“おいしい場面”で輝く!
金崎夢生とともに鳥栖を救うか。
posted2018/07/30 12:00
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
掴みどころのないストライカー。
それが、フェルナンド・トーレスに対して、個人的に抱き続けてきた印象だった。
フットボーラーとして特別な才能に恵まれたうえに、ルックスも申し分ない。端正なマスクにさらさらのブロンドヘアを靡かせ、リバプールに所属した2008年には「プレミアリーグで最も好きな選手ランキング」の堂々1位に輝いている。そんな風に非の打ちどころがないからこそ、逆に掴みどころがないのかもしれない。実際、プレースタイルも泥臭さとは無縁で、感情の起伏もあまり表に出ないから、その熱量を測りにくいのだ。
分かりやすい比較対象が、スペイン代表のFWとしてほぼ同じ時代を生きたダビド・ビジャだろう。
アトレティコ・マドリーのカンテラで育ち、わずか15歳でプロ契約、16歳でトップチームに昇格し、19歳の若さでキャプテンにも任命された正真正銘のスーパーエリートがトーレスなら、下部リーグからの叩き上げで、苦労を重ねながらスタープレーヤーの仲間入りを果たしたのがビジャだった。
ビジャのほうが数字的にも頼れた。
そんな育ちの違いかどうかは分からない。けれど、トーレスより3つ年上のストライカーは、ゴールが決まれば全身で喜びを爆発させ、決定機を逃せばピッチに拳を打ちつけて、これでもかというほど悔しがった。感情の発露がストレートで、分かりやすいのだ。
トーレスのあだ名がカスティージャ語の“エル・ニーニョ”で、ビジャのそれはアストゥリアス語の“エル・グアッヘ”。どちらも意味は同じ「子供、少年」だが、やんちゃなガキ大将がビジャで、トーレスはずっとクールで大人びていた。
ただ、スペイン代表で頼りになったのは、ビジャのほうだった。
最終ラインの裏に抜け出すスピードが最大の武器で、どちらかと言えばカウンター向きのトーレスよりも、味方との細かなパスワークで相手ゴールに迫ろうとするビジャのほうが、スペインのポゼッションスタイルに合っていたのだろう。代表での通算記録はビジャの98試合・59得点に対して、トーレスは110試合・38得点。パフォーマンスの安定感の差は、その数字以上だった。