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横浜FMに憧れ湘南で育ち浦和で飛躍。
遠藤航の叶った夢と「もう1つ」。
posted2018/07/31 11:30
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph by
Getty Images
日本代表DF遠藤航は、ロシアW杯で一度も試合には立てなかった。目の前に引かれたタッチラインの向こう側が誰よりも近くて遠い。“世界”は体感できずに終わった。
ベルギー戦後、「試合に出られなかった選手は、この座り心地の悪かったベンチの感触を忘れるな」と西野朗監督から言われた。悔しさの詰まったロストフのベンチ。遠藤はそこから立ち上がった瞬間、過去に味わったことのない感情と向き合っていた。
「ベルギー戦が終わった瞬間、『早く試合に出たいな』って思っている自分がいました。とにかく早く試合をしたくって、もうウズウズしていました。これだけ試合に出られなかった経験なんて過去になかったですから。それに、その悔しさをぶつけるのは、ピッチでの戦いしかなかった」
遠藤はフットボーラーとして2つの目標を掲げている。
「欧州でプレーすること。ワールドカップで活躍すること」
ベルギー戦の試合終了を告げる笛は、遠藤にとって、その目標を実現する4年後に向けた新たなスタートの合図でもあった。
ハリルに言われた「40代のよう」。
帰国後、目標の1つがさっそく叶う。今夏、浦和レッズからベルギー1部のシント・トロイデンへの完全移籍を果たした。その先の主要リーグへのステップアップも視野に入れたものだが、まず欧州での第一歩を踏み出すこととなった。
ヴァイッド・ハリルホジッチ元監督の下、遠藤は2015年夏の東アジアカップ(現E-1東アジア選手権)でA代表デビューしている。ハリルから突然言われたことに小さくない衝撃を受けた。
「40代のようなプレーをしているな」
含蓄のある表現だが、決して良い意味ではなかった。冷静沈着であることは彼の武器だが、もっとアグレッシブにいけ、という裏返しだった。
さまざまなポジションを高いアベレージでこなし、常に動じず泰然と構えている。それはそれで強みだと自負する。ただ日本代表のような一流の中の一流が集うレベルになれば、「いろんなポジションができるのはメリット。でも器用貧乏とも言える。どうしても二番手、三番手になってしまう」と遠藤は自覚する。もう一皮剥けてレベルアップするために下したのが、環境を変えるという決断だった。