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トーレスは“おいしい場面”で輝く!
金崎夢生とともに鳥栖を救うか。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2018/07/30 12:00
デビューの仙台戦、初先発の磐田戦とも無得点だったもののチャンスを作ったフェルナンド・トーレス。今後の得点量産に期待だ。
鳥栖での2試合は無得点で勝利なし。
そんな、掴みどころのなさと勝負強さが同居する天才肌のストライカーが、Jリーグのサガン鳥栖にやって来た。
マドリードで生まれ育ち、リバプール、ロンドン、ミラノといった大都市でキャリアを過ごしてきたエリートが、欧米諸国とは文化も言葉も大きく異なる日本の、それもプロビンチャのクラブを新天地に選んだのは、それ相応の覚悟があってのことだろう。
いずれにしても、彼に求められる仕事はただひとつ、「ゴール」であることに間違いはない。それが得点力不足に悩み、下位に低迷するチームであれば、なおさらだ。
7月22日のベガルタ仙台戦で50分からピッチに立ってJリーグデビュー、28日のジュビロ磐田戦では初スタメンを飾ったトーレスだが、しかしここまではノーゴールで、チームも勝利から遠ざかったままだ。
それでも、随所に可能性は感じさせている。
金崎との2トップは好連係を見せた。
とりわけ目を引くのは、ボールの受け方の巧さ。マーカーの存在を背中に感じながら、すっと体を入れ替えて前を向く。この技術は誰もが簡単に真似のできるものではない。
決してエゴイストではなく、周囲を活かすことにも躊躇がないトーレス。鳥栖では2列目のサイドからトップ下まで幅広く対応する小野裕二との相性が良さそうで、また磐田戦では、同じくこの夏に新加入の金崎夢生とも、初めて2トップを組むとは思えないほどの好連係を見せている。
ただ、鳥栖の選手たちは、高さがあってボールを収められるトーレスを、前線の基準点としてばかり考えているように見えたが、彼の一番の持ち味が裏への抜け出しであることを思い出すべきだ。トーレスが手を挙げて要求したタイミングから、実際にパスが出てくるまで、いつもワンテンポ遅い印象を受けた。
磐田戦の55分、ハーフウェイラインの手前からロングボールを蹴り込み、抜け出したトーレスが胸トラップからループシュートを狙うシーンがあったが、ああいった早めの仕掛けのパスをもっと増やせば、自然とゴールの可能性は高まっていくだろう。