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トーレスは“おいしい場面”で輝く!
金崎夢生とともに鳥栖を救うか。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2018/07/30 12:00
デビューの仙台戦、初先発の磐田戦とも無得点だったもののチャンスを作ったフェルナンド・トーレス。今後の得点量産に期待だ。
EURO2008でのトーレスへの記述。
移籍1年目のリバプールで大量24ゴールをマークし、「クラブと代表では別人」というレッテルを剥がすべく、自信を持って臨んだEURO2008。しかし、ここでもトーレスはゴールが遠かった。調子自体は悪くなかったし、チャンスメーカーとして機能はしていたが、あくまでも2トップを組むビジャの引き立て役でしかなかった。
EURO2008の取材ノートを引っ張り出してみると、トーレスに関するいくつかの記述が見つかった。
例えば、延長PK戦の末にイタリアに競り勝った準々決勝。
「85分、トーレスOUT。延長前に休息を取る仲間に近寄りながら、結局、誰にも話しかけずに輪から遠ざかって爪を噛む」
その姿は、この試合で何もできなかった自分自身を責めているようにも映った。
例えば、ビジャが前半途中で負傷交代を余儀なくされながら、3-0の勝利を収めた準決勝のロシア戦。
「トーレス、そろそろ決めておかないとヤバいかも」
この日、数え切れないほど決定機を外し続けた背番号9が、69分に交代を命じられた場面で、そんなコメントをノートに書き記している。
最後はおいしいところを持っていく。
きっとナイーブで、深く考え込むタイプなのだと思う。だから調子が良い時は手が付けられないが、一方でスランプも長い。
掴みどころがないのは、そうやって悩んだ挙句に、最後はおいしいところを持っていくからだ。
ビジャ不在のドイツとのEURO2008ファイナルで、シャビのスルーパスから決勝ゴールを奪い、スペイン代表の“敗北の歴史”に終止符を打ったのは、トーレスだった。
さらにその4年後のEURO2012では、出場機会が限られるなかで大会得点王となる3ゴール。イタリアとの決勝では途中出場で1ゴール・1アシストをマークして、連覇に貢献している。
そのキャリアで最も輝かしい時を過ごしたリバプールを離れ、当時のプレミアリーグ史上最高額の移籍金5000万ポンド(約66億円)でチェルシーに入団したのが、2011年1月。このチェルシー時代は結局、在籍3年半でリーグ戦通算20ゴールと不振に喘ぐことになる。
しかし、信じられないようなミスで決定的なチャンスを何度となくフイにしながらも、チャンピオンズリーグ準決勝でバルセロナを粉砕した独走ゴールや、ベンフィカ・リスボンとのヨーロッパリーグ決勝で奪った先制ゴールなど、相変わらずここ一番での大仕事が少なくなかった。