“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ライバルは“韓国のメッシ”イ・スンウ。
U-19代表・堂安律が目指す世界基準。
posted2016/10/27 11:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
AFLO
得意の左足から放たれたボールは綺麗な弾道を描き、ゴールネットに吸い込まれた。
待望のAFC U-19選手権初ゴールは、10年間閉ざされていた世界の扉をこじ開ける決定打となった。
AFC U-19選手権準々決勝、U-19タジキスタン代表との一戦で、MF堂安律が大きく躍動した。8分に右サイドでボールを受けると、ルックアップして中を見る。ファーサイドのスペースでフリーになっているFW小川航基の動きを捉えると、肩の力が抜けたフォームから、左足のシャープなスイングでピンポイントクロスを送り込んだ。これを小川が頭で捉え、日本に先制点がもたらされた。
さらに19分には、カウンターから左サイドを突破したMF三好康児のクロスを、ファーサイドで胸トラップして素早く左アウトサイドで持ち出し、キックの体勢に入った。
「ファーストタッチを左に置いた時、相手が食いついてこなかったので、『自分のコースだ』と思った」
アシストのシーンと同じナチュラルなフォームから放たれたシュートは、プレスに来たDFと構えていたGKを嘲笑うかのように、鮮やかな弾道を描いてゴール左上隅に吸い込まれた。
「イメージ通りだった」と会心の表情を見せた一撃は、チームの勝利を決定付けるゴールとなり、その後2点を追加した日本は、4-0の完勝で来年韓国で開催されるU-20W杯の出場権獲得を果たした。
「使ってくれている監督には申し訳ない気持ち」
「やっていて本当に楽しかった」
屈託の無い笑顔の裏には、大きな苦悩もあった。グループリーグまでの彼は、はっきり言って燻っていた。
「自分のコンディションの出来がまだ悪い。その中で使ってくれている監督には申し訳ない気持ちでいっぱいです」
堂安はグループリーグ3戦すべてに先発出場していた。初戦のイエメン戦では強烈なシュートがポストを叩き、そのこぼれからFW岩崎悠人のゴールが生まれるなど、存在感も見せていた。しかしそれ以上に、ドリブルが引っかかったり、ボールを持ってもシュートまで持ち込めないなど細かいミスが多く、攻撃を停滞させてしまう場面もあった。
空回りの原因は彼の世界大会に懸ける想いの強さにあった――。