“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-19が日本初アジア制覇に王手。
準決勝ベトナム戦で見た万全の組織力。
posted2016/10/28 12:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
AFLO
AFC U-19選手権の準々決勝でタジキスタンに4-0で勝利し、来年のU-20W杯の出場権を掴み取ったU-19日本代表。しかし、この戦いはここで終わりではない。これまでのU-19日本代表が一度たりともなし得なかったアジア制覇に向けて、準決勝であたるベトナム戦はチームの「総合力」が問われる一戦となった。
準々決勝のタジキスタン戦からMF市丸瑞希を除く、すべてのメンバーを入れ替えた日本だったが、これは決して主力を休ませるためだけの戦略ではなかった。これまで試合に出ることが出来なかった選手の意地とプライドを尊重し、チームとして全体の底上げを図る意図があったのだ。
内山篤監督はベトナム戦の前日のコメントで、「当然、ベトナムに勝利することが前提条件」と前置きをしたあと、「このチームが目指しているサッカーでは、ピッチにいる選手がちょっと違うことを考え出すとズレてくるんです。個々で的確な判断が出来ればうまくいくし、違う判断ならばすぐにミスへと繋がる。特にうまくいかない時間帯で、個々が好きなことをやると簡単に崩壊してしまいますから」と続けた。
ベトナム戦は、なぜそんなに重要だったのか?
内山監督が常々このチームに植え付けてきたことは「判断の共有」。
今チームとして何をすべきか、チームコンセプトである「攻守においてコンパクトに保つ」を試合の流れの中でどう構築していくのかという意識を、全員で共有しないといけない。
「例えば、『今カウンターに行けばいい』という最初の時点で、誰かの動き出しが遅いと、それは判断共有のミスが生まれているという証拠。そのカウンターの最中にミスが生まれたとのだとしたら、共有出来ていることになります。
例えば、慌てずにマイボールにしなければいけない時間帯で、判断を共有できていない選手が1人だけ勝手に仕掛けていって、引っかかって(ボールを取られて)また守備の時間になると、無駄に周りの負担が大きくなってしまう。
そうならないように的確な判断を共有していければ、必ず試合運び全体もうまくいく。
明日はメンバーが多く変わった中で、いかにそれが出来るかが試されると思います。当然、メンバーが変わる分、緊張やプレッシャーの中でもどれだけ出来るかという検証も、今後に向けて大事になる」
メンバーが大きく入れ替わっても、きちんと判断を共有して結果を出せるか――。
ベトナム戦での選手入れ替えは、単に主力を休ませるというだけではなく、今の「チームとしての組織力をはかる」という明確な狙いがあったのだ。
結果、彼らはその狙いをきっちり成功させてみせた。