錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
日本代表選手としての錦織圭に注目!
デ杯で日の丸を背負う戦いが、始まる。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/02/27 15:20
左から錦織圭、ダニエル太郎、内山靖崇、添田豪、伊藤竜馬、植田実監督。2014年のデ杯、チェコ戦での試合後の風景。怪我で欠場となった錦織も、チームの応援に駆けつけていた。
昔風の代表チームに吹き込んだ、錦織の新しい風。
昨年、カナダとの1回戦のときに言っていた、デ杯でのスタンスについての言葉もよく覚えている。
「団体戦の戦い方とかはあえて考えないようにしてます。チーム戦の重み、プレッシャーは自然にのしかかってくるので、平常心で自分のテニスをやることだけしっかり頭に入れてプレーしています」
団体戦だとか団結力だとか、日本は過剰に意識していたのかもしれない。長年、日本のエースを務めていた鈴木貴男はこう振り返る。
「それはありました。ランキング2桁の選手なんかいなかったわけなので、実力では勝てない。じゃあ実力以上のものを本番で出すためには、チーム力とかそういうところから引き出すしかなかった。そのために合宿も長くとったし、練習も行動も皆でやるということが大切でした」
その時代から、そして現在も代表を続けている30歳の添田は、雰囲気の変化を比べられる立場にある。
「いい意味で今は力が抜けているというか、もちろんプレッシャーはありますけど、個人の力もついてきて、自分のベストを出すことにそれぞれが集中している感じです」
つまり、それは錦織が〈昔風〉のチームに吹き込んだ新しい風だったといえるのではないだろうか。
錦織と年齢が近く仲もいい伊藤はうなずく。
「そうですね。一番年下なのにいきなりエースという立場で、最初のデ杯では圭も負けました。それもあって、エースだからとか団体戦だからとか考えないでやるのが結局一番いい状態で試合ができるって思ったんじゃないですかね」
誰よりもリラックスしていて、誰よりも自分のベストをコートで出す。その姿が他のメンバーたちに与えた影響も大きかった。
期待の大型新人のデ杯デビューはホロ苦く。
伊藤が言うように、錦織はまだ18歳だった'08年に初めて代表メンバーに選ばれ、そのデ杯デビュー戦で苦い思いをしていた。
その2カ月前にデルレービーチで、世界的にセンセーショナルなニュースとなったツアー初優勝を果たし、ランキング118位にまで上がっていた錦織。だが、日本のデ杯史上最年少メンバーとして臨んだアウェーのインドで、当時325位だった選手に敗れるという挫折を味わうことになったのだ。