ブラジルW杯通信BACK NUMBER
11人のチームと、“独裁者”の決勝戦。
「至高のW杯」はどちらの手に。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/07/11 16:30
ブラジルに大勝し、クローゼはW杯通算最多となる16ゴール目も決めた。チーム状態もまさに万全と言えるドイツが、南米の地で王座に着くのか。
戦術修正を可能にする“バイエルン7人衆”の存在。
大会期間中、チームはインフルエンザや故障に見舞われたが、レーブは試合毎に細かな戦術修正をチームに加え、結果を出しながらチームの調子を維持させてきた。
グループリーグの段階では、センターバック4人を最終ラインに配置し、ライバル国のサイド攻撃を封じた。フランスを破った準々決勝からは、主将ラームを中盤から右SBに移し、MFケディラとMFクロースのコンビによる中央突破を引き出した。
大会前の時点でほぼ完成していたチームに、レーブが手を加えることを怖れなかったのは、攻守の柱に“バイエルン7人衆”がいるからだ。
「4-2-3-1」に縛られ気味だった南アフリカ大会に比べ、それぞれが異なるポジションをこなせるようになったMFシュバインシュタイガーとMFクロース、そして主将ラームによる中盤のバイエルン・パケットは、「4-1-4-1」や「4-3-3」への柔軟な進化をもたらした。前線のあらゆるポイントからフィニッシュに持ち込むFWミュラーは5得点を挙げ、得点王も狙う勢いだ。後方にはDFボアテンク、ゴール前には世界最高のGKノイアーが待ち構えている。ドイツの至宝ゲッツェも出場時間は短いが、攻撃に違いを生み出している。
タレント豊富なドイツには、ドルトムントやシャルケの国内組、さらにMFエジルやFWシュールレなどの国外組も揃う。彼らはもともとアンダー世代から多くの国際大会を経験してきた長年の戦友だ。勝負どころでスパートをかけるタイミングは互いに熟知している。
フィジカルとハイプレス、ポゼッションとショートカウンターが高い次元で融合する代表チームを、レーブはついに完成させたのだ。
エゴが衝突した'02年とは異なる、現在のチーム。
ドイツ代表として3大会ぶりの決勝戦を控える彼らには、驕りもない。
'02年大会で準優勝に終わったチームは、司令塔バラックと守護神カーンという2大プレーヤーのエゴの衝突を消化することができなかった。
多くのGKが台頭した今大会で、なお別次元の実力を証明した守護神ノイアーは自信を漲らせる。
「10人とGKじゃない。ドイツは11人全員でプレーするんだ」
今のドイツは、文字通り“マンシャフト(=チーム)”として団結している。