ブラジルW杯通信BACK NUMBER
W杯初戦で勝点を得た'02年と'10年。
日本に必要な「情報戦」の仕掛け方。
posted2014/05/12 10:40
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
真正面からぶつからなくてもいい。
グループステージ初戦のコートジボワール戦である。
古い記憶を掘り起こしていただきたい。
2002年の日韓ワールドカップのグループステージ初戦で、フィリップ・トゥルシエ率いる日本がどんなサッカーをしたのか覚えているだろうか。誰もが記憶に刻んでいるのは、鈴木隆行の同点ゴールであり、一度は逆転弾となった稲本潤一のドリブルシュートのはずである。日本とベルギーが2点ずつを奪い合った後半は、ジェットコースターのようなスリルに満ちていた。
前半の日本は?
これといったチャンスは作っていない。
一方のベルギーは、何度か決定的な場面を作り出している。相手のゴールに迫った回数はほぼ同じだったが、相手を脅かしたのは日本ではなくベルギーだった。
トゥルシエが仕掛けたベルギーへの「撹乱」。
しかし、それこそが日本の狙いだった。2トップの一角を担っていた柳沢敦が、試合後にこんな話をしている。
「前半はロングボールを使ってセーフティにプレーしろ。後半はいつものつなぐサッカーをしろ、というのが監督の指示でした。そうすればベルギーは、後半もロングボールを警戒してくる。ボールをつなぎやすくなる、と」
ベルギーが知らない姿を、意図的に見せつける。彼らが情報をアップデートしたところで、いつものサッカーへ切り替える。いまとなってはほとんど記憶に残っていない前半の攻防が、ワールドカップ史上初の勝点獲得の伏線に、そしてベスト16入りの足掛かりになっていたのである。