ブラジルW杯通信BACK NUMBER
W杯初戦で勝点を得た'02年と'10年。
日本に必要な「情報戦」の仕掛け方。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2014/05/12 10:40
2002年の日韓W杯で日本に史上初の勝ち点、勝利、グループリーグ突破をもたらしたフィリップ・トゥルシエ。現在は中国スーパーリーグ、深セン紅鑽を指揮している。
南ア大会でカメルーンを驚かせた2つの起用。
南アフリカワールドカップの直前も、思い出していただきたい。
5月24日に埼玉スタジアムで韓国と対戦した日本は、使い慣れた4-2-3-1でスタートした。1トップは岡崎慎司である。
6日後にグラーツでイングランドに向き合ったチームは、4-1-4-1にシステムを変えていた。GKが楢﨑正剛から川島永嗣となり、阿部勇樹をアンカーに置いた。1トップはこの日も岡崎だった。
5日後にコートジボワールと対戦したチームは、4-2-3-1でスタートした。遠藤保仁と阿部がダブルボランチを組み、2列目に本田圭佑、長谷部誠、大久保嘉人が並ぶ。1トップはここでも岡崎である。
ワールドカップの日本戦を前にしたカメルーンのスタッフが、3試合をすべてスカウティングしていたとしよう。だとしてもカメルーンは、ブルームフォンテーンの戦いで勝敗に強い影響を及ぼしたふたつの情報を入手できていない。
本田圭佑の1トップと、松井大輔の2列目右サイドでの起用である。
初戦に勝ち点をあげた2回に共通する、意外性。
ギャンブル的要素の強い変更だったのは間違いない。ベースキャンプ地のジョージ入り後に慌ただしく組まれた練習試合で、それも45分試しただけである。スタメンに名を連ねていた時期があり、2列目に馴染みのある松井はともかく、本田の1トップはまったくのぶっつけ本番である。
もちろん岡田監督に、情報戦を挑む余裕などなかっただろう。だが、グループステージ初戦に登場したチームは結果的に、カメルーンが良く知る日本ではなかった。決勝ゴールへの流れは、誰もが知るとおりである。松井のピンポイントクロスから、本田が左足でプッシュしている。
ゲームへのアプローチに違いこそあれ、いつもと異なる表情をのぞかせたという意味で、ベルギー戦とカメルーン戦は共通する。そして、過去4度の出場で初戦に勝点をあげたのは、'02年と'10年だけである。