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プレミア勢の移籍で明暗を分けた、
「フットボール・ディレクター」の存在。
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山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2013/09/10 10:30
![プレミア勢の移籍で明暗を分けた、「フットボール・ディレクター」の存在。<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/700/img_7961c9c545d543321d6e391dc48eb0a4321759.jpg)
第3節アーセナルとのノースロンドンダービーで、ローマから獲得したばかりのエリック・ラメラに指示を出すビラスボアス監督。
ベンゲルはトッテナムの積極策を非難するが……。
トッテナムの順調な補強ぶりは、積極補強を示唆していた地元ライバルの苦戦によって際立った。アーセナルのアーセン・ベンゲルは、「新戦力が活躍できなければ監督の起用法が非難され、活躍すればFDの功績になる」という発言からも分かるように、反FD派の監督だ。自軍が、フランスU-21代表のヤヤ・サノゴと、29歳の出戻りマテュー・フラミニを加えただけで8月を終えても、「補強を行なったと言いたいがために、軽率な行動に出るような真似はしない」として、トッテナムの獲得ラッシュをけなすような発言までしている。
たしかに、9月2日の移籍市場最終日に獲得したメスト・エジルは、個人の質でトッテナムの新加入組を上回る、ワールドクラスのプレーメイカーだ。レアルからの獲得に、クラブ史上最高の約65億円を支払うだけの価値もあるだろう。しかし、ベンゲル自身が「最優先」と言っていた一線級のCF獲得は、ついに実現しないままだった。
当人も移籍を望んでいたルイス・スアレスの獲得は、契約上の交渉権獲得額ギリギリを狙った「40,000,001ポンド」というオファーが、リバプールの反感を買い、商談相手の拒絶反応を強めただけだった。土壇場のデンバ・バ獲得工作も、チェルシーが要求した4億円台のレンタル料を飲む決断ができなかった。ベンゲルの傍に、補強に関して監督に意見できる、かつてのデイビッド・デイン副会長のような役員がいれば、エジルの前方にも即戦力を獲得していたのではないだろうか?
マンUはフェライニを43億円で高掴み。
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もっとも、今夏一番の失態を晒したのは、マンチェスター・ユナイテッドだ。昨季まで、アレックス・ファーガソンの長期政権が続いたクラブは、FDとは縁がない。新監督のデイビッド・モイーズも、古巣エバートン時代から全権を求めるタイプだが、前監督の勇退と同時に、デイビッド・ギルCEOもクラブを去った点が痛かった。ギルは、移籍市場におけるファーガソンの右腕だったのだ。
新CEOは、コマーシャル部門から内部昇格したエド・ウッドワード。だが、昨季まで担当したビジネスサイドのスポンサー契約と、新たな現場サイドの選手契約とでは、交渉の複雑さも難易度も違っていたようだ。「狙うはクラブに相応しい最高レベルの戦力のみ」と勇ましかったが、即戦力は、エバートンから、モイーズの息がかかっているマルアヌ・フェライニしか獲得できなかった。
そのフェライニ獲得にしても、切羽詰まった市場閉幕間際に約43億円の要求額を飲んでいる。7月中であれば、7億円ほど安い価格で買い取る手段があった。8月に入っても、イングランド代表SBのレイトン・ベインズとのセットで43億円という、高飛車なオファーでエバートンの顰蹙を買い、売り手に、どちらか一方のみの放出に留める決意を固めさせた。
結果的な補強具合では、中盤にはマンチェスター・シティからギャレス・バリー、前線にはチェルシーからロメル・ルカクを借りるという、効果的なレンタルで今夏の補強を締め括ったエバートンに分がある。マンUは、アーセナルと同じく、補強戦略を誤ったと言える。