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プレミア勢の移籍で明暗を分けた、
「フットボール・ディレクター」の存在。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/09/10 10:30

プレミア勢の移籍で明暗を分けた、「フットボール・ディレクター」の存在。<Number Web> photograph by Getty Images

第3節アーセナルとのノースロンドンダービーで、ローマから獲得したばかりのエリック・ラメラに指示を出すビラスボアス監督。

FDが監督交代の影響を最小化する効果を発揮したマンC。

 対照的に、地元の宿敵マンCは、7月中に十分な補強を完了していた。功労者は、昨季途中にFDに迎えられたチキ・ベギリスタイン。バルセロナでも補強を担当した敏腕は、市場の動きを見ながら巧みにターゲットを変え、オーナーが攻撃色強化を望むチームに適した新戦力4名を呼び寄せた。フェルナンジーニョとヘスス・ナバスの両MFは、マヌエル・ペジェグリーニ監督の就任決定に先立つ獲得だ。監督交代に伴う、チーム作りへの影響を最小限に留めるという、FD採用のメリットを示す例でもある。

 FD採用に懐疑的な人々は、今夏のニューカッスルを引き合いに出すのだろう。6月に就任したジョー・キニアは、「監督経験を持つ自分は他のFDをはるかに凌ぐ」と豪語しておきながら、FW2名、MF1名、CB1名を求めたアラン・パーデュー監督に、FW1人しか提供できなかった。しかも、2部に降格したQPRからのロイク・レミ獲得という、比較的容易な獲得交渉だった。

 だが、これはFDの有効性ではなく、キニアの適性に問題がある。当人が吹聴した監督歴は、'09年に自身の入院とチームの降格で幕を閉じたニューカッスルの他は、ウィンブルドン、ルートン、ノッティンガム・フォレストなど、今日のプレミアとは縁のないクラブばかり。今夏のプレミア新加入選手のうち、ほぼ6割が海外からの移籍だったように、国際化した補強の現場で頼れる人物とは思えない。

ファーガソンが去り、全権監督の時代は終わるか。

 一方では、FD専任者はいないが、補強の分業制が機能し始めた上位勢の例も存在する。6月の時点で新守護神のシモン・ミノレら3選手を獲得するなど、移籍市場で軽快な動きを見せたリバプールだ。現在は、ブレンダン・ロジャーズ監督、チーフスカウト、獲得候補の分析主担当、そして経営責任者のMDが協力して、FDの役割を果たしている。計9選手を加え、開幕から3連続無失点勝利を見せたリバプールには、トッテナムと共に、トップ4争いを超えて優勝戦線に顔を出すことも可能とする意見まで聞こえ始めた。

 その優勝争いでは、第3節でリバプールに敗れた(0-1)マンUを抑え、戦力充実のマンCと、ウィリアンの加入で2列目要員に逸材6名が揃うチェルシーが筆頭候補と言われるようになった。チェルシーに復帰し、異例の長期展望を掲げているジョゼ・モウリーニョ監督は、フランク・アルネセンやアブラム・グラントの存在を無視した前回とは違い、現FDのマイケル・エメナロ主導での補強を認めてもいる。

 かつて、「監督こそがチーム作りの最重要人物」と断言したのは、モウリーニョが「ボス」と呼んでいたファーガソン。だが、マンUで四半世紀以上も全権を掌握し続けた名将は、もう現場にはいない。1つの節目を迎えた今季のプレミアは、FD時代の幕開けを告げることになるかもしれない。

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