欧州サムライ戦記BACK NUMBER
宮市亮、故障を越えてチャンス到来。
「らしさ」でアーセナルに生き残れ!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAkio Hayakawa/AFLO
posted2013/09/13 10:31
アーセナルのユニフォームを着て、エミレーツスタジアムに立つ宮市亮。12月で21歳、「期待の若手」を卒業するにはいい頃合だ。
昨季終盤の3月9日、宮市亮はレンタル移籍先のウィガンでタッチラインの外に弾き飛ばされ、同時にアーセナルの今季チーム構想からも外れかけた。FAカップ準々決勝、エバートン戦での出来事だった。
その場面を筆者はワトフォード(2部)のメディアルームで目にしたが、モニターの前で、思わず「うわっ」と声を出してしまった。周囲からも、宮市が受けたスライディングタックルの激しさに「ウオッ」と声が上がった。しかし、彼らの顔は笑っていた。「奇麗に吹っ飛んだな」という者もいた。
プレミアリーグ担当でもない英国人記者たちは、宮市の名前も認識してはいなかっただろう。担架で退場した若者にとって、4カ月ぶりの復帰戦だったことなど知る由もない。日本人の筆者としては悔しく、運のない宮市が不憫でならなかった。その数十分後にキックオフを迎えたワトフォード戦の内容よりも、宮市負傷の瞬間が記憶に残る1日になった。
主力選手の負傷によって宮市にも出場機会が。
だが、それから約半年が経過し、アーセナルに戻った宮市にも、ようやく運が向いてきた。ポジションが重なる主力の故障により、少なくともアーセン・ベンゲル監督の今季構想内には返り咲くことができた。他人の不幸を喜んではいけないが、プロの世界は情け無用。チャンスはチャンスだ。
アーセナルでは、開幕戦でアレックス・オクスレイド・チェンバレンが膝を痛めた。翌々週の8月27日、ホームにフェネルバフチェを迎えたCL予選第2レグでは、後半早々にルーカス・ポドルスキがハムストリングの怪我でピッチを去った。チームは、今夏にアンドレイ・アルシャビンとジェルビーニョを放出済み。アウトサイドでスピードを武器にできる戦力は、セオ・ウォルコットの他は、宮市と18歳のセルジュ・ナブリのみとなった。
宮市の出場機会は、早速そのフェネルバフチェ戦で訪れた。2試合合計のスコアが5対0となり、アーセナルの本戦出場がほぼ確定していた74分、ウォルコットに代わって右サイドに投入された。「アーセナルの宮市」としては、昨年1月以来となる、公式戦でのエミレーツ・スタジアムのピッチ。15分強の出場では厳しい部分があるのは仕方ないにしても、存在感アピールの程は微妙だったと言わざるを得ない。