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自転車好きは鉄道好き?
世田谷線に沿ってゆったり走る。
 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2010/06/18 06:00

自転車好きは鉄道好き?世田谷線に沿ってゆったり走る。<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

まもなく本格的な夏が来る。

 結局、その場で謎は解けなかった。

 後で地元出身の人に聞いてみたところ、この森に接する豪邸がポイントだそうで、要するに古くからの地主、Hさんというお大尽がいらっしゃって、そのお大尽が、仕事なのか、道楽なのかワカランながら、庭いじりをする、その大規模なものがこれで、途中で飽きて投げ出した(?)跡がこれ、ということなんだそうだ。

 いや、あくまで噂に過ぎない。

 しかし、世田谷区内の、いかにも住みやすそうな住宅地である。地価も高かろうし、固定資産税もさぞや高かろう。こんな手つかずで放ったらかされているのは、何だかもったいないね。

 竹藪を出て、しばらく線路沿いをゆっくりゆらりと走っていくと、太陽が真上から差してきて、線路沿いには「夏の匂い」が漂ってくるよ。

 コンクリートと鉄条網、放置されたレール、そうしたものの間にセイタカアワダチソウが何本も立っている。

 まもなく本格的な夏が来る。

 でも、その前にイヤな梅雨もやってくる。それまでのつかの間の自転車ツーリング黄金期「初夏」なのだ。今は。

木造洋館・シュロ付きという医者屋敷。

 若林の駅の向こうには、銭湯の高い煙突が見える。

 世田谷区というのは、大田区や足立区と並んで、実は銭湯の多いところで、今でもこうした古い住宅地には銭湯が残っている。

 ただし、地価の高さから、廃業、撤退のスピードも(おそらく)ナンバーワンで、ちょっと油断していると、すぐになくなってしまって、いつの間にやら小さなマンションが建っていたりする。

 東京の銭湯、現在、およそ900湯。

 かつては3000近くあった。寂しいことだが、現実だ。だって、最近行きました? 銭湯。見ましたか? あの懐かしい富士山のペンキ絵を。

 さて、その銭湯のすぐ近くに、おや、これまた懐かしいというべきか何というべきか、私が名付けるところの「医師屋敷」がある。

 いやまあ、普通に「医院」なんだけど、昔のお医者さんはなぜみな同じような医院を構えたんだろう。

 木造の洋館、石造りの門柱。すぐ横には、必ず、シュロなどの南洋系の樹木が植えられている。

 そういえば、私の育った宮崎県日南市にもそのままそっくりの医院があった。私が小学生だった時代、その時すでに廃院していて、我々はみな「幽霊屋敷」と呼んでいた。

「医療過誤による死人が数十人も出て、医院は廃業、院長は夜逃げ。その後、幽霊がたくさん出るようになった」などと、ありがちな伝説が後で付け加わったりしていた。勿論、そんな事実はない。

 ひょとすると医院も、近所のガキどもからはそんなことを言われているのではないか。

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