自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
自転車好きは鉄道好き?
世田谷線に沿ってゆったり走る。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2010/06/18 06:00
謎の緑地帯でヤブ蚊と出会う。
電車はまずごちゃごちゃとした下町風の住宅地を突っ切っていく。西太子堂周辺のこのあたりはホントに住宅密集地、というか、アパート密集地でね。しかもアパートが80年代に建った風の「ちょっとモダン、ちょっと安普請」という感じなんだ。
私にとっては懐かしいよ。なぜなら東京に出てきたばかりの私が住んだのがまさにこういう「ワンルームマンションと称するアパート」であり、薄っぺらな豊かさが横溢した80年代中盤だったから。
で、だ。
おやおや? ちょっと行くと、何やら奇妙な2つの緑地帯にぶち当たる。
一つ目の緑地帯は、墓地が併設されているからすぐ分かる。最勝寺という名前のお寺さんだ。秘仏の不動明王があるという。敷地の広い、ちょっと歴史のありそうな立派なお寺。
だが、もう一つの緑地が分からない。
若林の駅を過ぎると、線路沿いに広大な森があらわれる。ちょっと謎なほどデカく、放ったらかしの原生林っぽい。
なんだろう、これ。
神社仏閣の手合いにしては、あまりに手が入ってないという感じ。というわけで、自転車でぐるっと一周してみた。こういうのが手軽にできるところが、自転車のいいところだ。
一番近づいたのが、写真にあげた「密林」である。ふーむ、ますます分からん。何なんだこれは?
実を言うと、この世田谷線沿線に住む、私の知り合いが以前からこう言ってた。
「そうそう、あの森、何かしら何かしらって前から謎だったのよ。ヘンに荒れてるっていうかワイルドで、広いでしょ。見るたびに気になってたんだけど、そのたびに忘れちゃうのよね」
確かにこれは謎ではある。そばによって覗き込むと、まさに密林。手つかずの竹藪からは、ヤブ蚊がぶんぶん飛来してきて、私としては早々の退散とせざるを得なかった。国有地でもなさそうだし、私有地、でも、何かに使っているという形跡が見えない。不思議なのだ。