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球界唯一の“左の本格派”吉川光夫が
最後まで見せなかった「荒々しさ」。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNaoya Sanuki

posted2012/11/02 12:05

球界唯一の“左の本格派”吉川光夫が最後まで見せなかった「荒々しさ」。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

マウンド上、息を整える作業を何度も見せた吉川光夫。今季、日本ハムの若き新エースとしてチームを牽引してきたが、最後の大舞台で実力を発揮することはできなかった。

「完全試合リレー」を達成されてもどこ吹く風。

 2007年の日本シリーズではこんなことがあった。日本ハムは1勝3敗で迎えた第5戦、中日の山井大介、岩瀬仁紀の2人に「完全試合リレー」を達成され、日本一を逃した。

 再び金子。

「あのときも、すごいことやられちゃったなあ、という感じでもなかった。宿舎に戻ってからは、もう、『終わった!』って、ホテルの最上階で外国人選手も交えてどんちゃん騒ぎをしてましたから」

 そういうチームである。しかも今回は2連敗のあと、札幌に戻ってきて2連勝。このムードに乗っかれば、吉川も澤村のような肝のすわった投球ができるに違いないと思っていた。

 だが、吉川は澤村にはなれなかった。

「負けられない試合」という重圧が想像以上だったのか……。

 立ち上がり、先頭打者の長野久義にいきなりストレートの四球を与えるなど7球連続ボール。それでも初回はなんとかしのいだが、2回表、第1戦に続いてまたしてもボウカーに被弾。そこから開き直ったのか、その日の最速150キロを記録するなど、いつもの伸びのあるストレートが一瞬、戻った。

 その裏、金子が、そんな吉川を鼓舞するように、タイムリーを放ち1-2と迫る。

 しかし3回表、再び制球が乱れる。4長短打を集中され、さらに3失点。計5失点で、3回途中でマウンドを降りた。これで、日本ハムは2勝3敗。巨人に王手をかけられた形になった。

 東京ドーム開催である第6戦、第7戦はDH制が使えないことを考えると、普段DH制を採用しているパ・リーグ球団の方が不利だ。したがってDH制の使える最後の試合、第5戦は、日本ハムの方がより負けられない試合だったはずだ。

 吉川にとっては、その重圧が、想像以上だったのだろうか。

 いずれにせよ、シーズンでは防御率1.71で最優秀防御率のタイトルを獲得し、14勝を挙げた吉川らしい「荒々しさ」は最後まで見られないままだった。

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