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9回、武田久登板に込められた意図。
総力戦制した日ハム・栗山采配の妙。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/11/01 11:50
試合後に栗山監督は「中継ぎ陣、武田久たちを含めて、無理にいってもらっているところもあるので……本当にみんな、よく我慢してくれました」と、移動日を除き厳しい連投が続く中継ぎ陣を称えた。
55年ぶりとなる20歳以下の先発投手対決となった日本シリーズ第4戦。
日本ハムの中村勝が、前半はカーブを、中盤からはストレートを主体に7回を無失点に抑えれば、巨人の宮國椋丞も7回3安打と安定した投球を披露する。
7回が終わった時点で0対0。
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両軍ともに戦力を出し惜しみすることなく投入し、8回以降も膠着状態が続いたが、延長12回、日本ハム・飯山裕志のサヨナラタイムリーによって、ようやく長い戦いに終止符が打たれた。
これで対戦成績は2勝2敗。
「これが、ファイターズがやってきた野球。本当にみんなよく我慢してくれました」
試合直後のお立ち台で栗山英樹監督は、そう言って胸をなでおろした。
チームの要である阿部慎之助が右ひざの故障で第4戦を欠場したとはいえ、日本ハムにとって巨人打線が脅威であることに何ら変わりなかった。
この試合のスタメンだけでも、長野久義、坂本勇人、高橋由伸、村田修一、小笠原道大と得点能力が高い打者が5人。控えにも、ベテラン・谷佳知、驚異の代打率を誇る石井義人らと阿部の抜けた穴を補えるだけの選手が揃う。
それだけに、先発を務めた中村の好投は日本ハムに力を与えた。
我慢比べに持ち込めば……日本ハムは勝てる!
栗山監督の言葉にもあったように、ゲーム終盤まで負けてさえいなければ我慢比べができる。そのような算段が日本ハムベンチにはあった。だからこそ、好投していた中村を躊躇なく代えることができたし、延長12回まで耐えしのぐことができたのだ。
そうなると、この試合の大きなポイントは、中村からバトンを受け継ぎ、強力巨人打線を最後まで封じたリリーフ陣となる。
8回を石井裕也に託したのは、クライマックスシリーズ(以下CS)での登板を通じて考えても順当なもの。
だが、9回の継投は、普段とはいささか異なる采配だったのだ。