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甲子園の風BACK NUMBER
「怪物・江川卓を攻略せよ」なぜ広島商は作新学院に勝てたのか?「じつは首を寝違えて…」江川が達川光男に言った「お前には1球も全力で投げてない」
text by

安藤嘉浩Yoshihiro Ando
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/30 11:04

難攻不落の怪物・江川卓を広島商ナインはどう攻略したのか?
達川光男には「1球も全力で投げてない」
その点については、広島商の捕手だった達川光男も語っている。
「ワシら何とか勝ったんじゃが、あいつは首を寝違えとって調子が悪かったらしいんよ」
「それに、プロ入りしてから、お前には1球も全力で投げてないって言われたよ」
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夏の100回大会を記念して2018年に朝日新聞で企画した「世代トーク」で、同世代の大野豊と対談してもらった時に語ってくれた。ぼくは同僚と、その対談を取材した。
達川は「秋の中国大会が終わって、『栃木にすごいのがおる』と監督に訳の分からん練習をさせられた」と、迫田の秘策についても触れている。無死または1死二、三塁からスクイズを失敗するという作戦だ。
「監督は『下手に当てたらフライになってゲッツーになるから、空振りせい』と。三塁走者が挟まれてタッチアウトになる間に、二塁走者が追い越す作戦ですよ」
ちなみに、夏の日田林工戦で、その応用である2ランスクイズを成功させたことには触れたが、このとき、二塁から一気に生還した走者が達川である。
この対談企画では、毎回最後に、自分たちの世代に名前を付けてもらった。
「僕らは『江川世代』だね」と達川は言った。
「たくさん良い投手がおって、捕手も豊作。江川のおかげだと思う。『江川を打ち崩さない限り、日本一にはなれん』が合言葉で、それまでサボることしか考えてなかったけど、ノルマより500回余分にバットを振ったりした」
1955年生まれで、異論がある野球人はいないだろう。
<前編とあわせてお読みください>
