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「コイツは何者だ?」“無名の天才ピッチャー”に聖光学院部長が絶句した…「特待生、決まったよ」母親のウソから始まった岡野祐一郎(元中日)の逆転人生
posted2024/09/21 11:03
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
JIJI PRESS
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補欠時代のトラウマ「特待なら行く」
「私立なのでお金がかかる。でも、また3年間、補欠だったら親に迷惑をかけるだけになってしまうじゃないですか。体験会ではブルペンで投げたりもしたんです。そこで特待かどうか決まるんですよね。だから、特待に選ばれて期待されていると判断できるのなら、行くと親に言っていたんです」
聖光学院の監督、斎藤智也に体験会のときの岡野祐一郎の印象を尋ねると「ぜんぜん覚えてないんだよね」と素っ気ない答えが返ってきた。
ところが母親は体験会のあと、岡野に「特待、決まったよ」と伝えている。
いずれにせよ、その知らせが岡野のハートに火を付けた。その日から約半年間、毎日5キロのランニングと腕立て伏せと腹筋を自分に課した。
「高校では絶対、補欠になりたくなかったので、とにかく決めたことをやり抜こうと思ったんです。正月も休まずにやりました。次の日、何か用事があるときとかは前日、夜12時過ぎてから走って、それを翌日分にカウントしたりもしていました。少なくともそのときはまだ特待だと信じていたんで」
「誰? コイツ?」関係者の衝撃
中学3年の秋から冬にかけてのがんばりが上積みされた岡野は、高校に入学すると早々に頭角を現した。毎年、3学年そろうと100人以上の大所帯になる聖光は、大雑把にAチームとBチームに分かれている。わかりやすく言えば、一軍と二軍だ。1年生は原則、Bチームからスタートする。Bチームの監督を務めていた部長の横山博英が岡野の衝撃を振り返る。
「B戦(Bチーム同士の練習試合)に先発させたら、いきなり1−0で抑えちゃったんです。誰? コイツ? って。そこからすぐにAチームにあげましたよ。1年生はだいたい夏まではBチームなので、そんなやつは普通いないんです」
そう言ったあと、横山は右手でボールを握る形をつくり、こう付け加えた。