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「県外出身者ばかり」を気にしていた過去…八戸学院光星の監督が本音「書き手としてはどうですか?」甲子園決勝で“地元の選手”を先発させた理由
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2024/08/20 11:07
青森の強豪・八戸学院光星を率いる仲井宗基監督に聞く、「県外出身者が多い」を気にしていた過去とは
仲井 わからないです。そればっかりは。ただ、地元の選手だからといって依怙贔屓するわけにもいかないんで、うちのチームのレベルについてこれる選手じゃないと、なかなか難しいのかなとは思いますけど。ただ、昔ほど県外出身者が多いみたいな言われ方はしなくなってきましたね。
高校野球の“あるべき姿”とは何か?
――それは確かに感じますよね。
仲井 地元の選手たちだけでやれるのなら、それに越したことはないのかもしれませんけど。それが本来のあるべき姿なのかなという。
――でも、「あるべき姿」も時代とともに変わっていくものじゃないですか。
仲井 でも書き手としてはどうですか? 物語になりにくいというか、ドラマになりにくいみたいな思いもあるんじゃないですか。
――そこは監督の腕の見せ所のような気もしていて。高校野球ってものすごく感情的なジャンルだと思うんです。つまり、世論を味方につけたチームが強い。仙台育英の須江(航)さんは、そのあたりうまいなと思うんですよ。「東北のみなさん、甲子園にエネルギーを送ってください」みたいな言い方をして、ファンを巻き込んでいくじゃないですか。
仲井 僕は「須江、埼玉やんけ」って思っちゃいましたけど。僕にそういう力はないんですよね。
明かす苦悩「あまり東北、東北って言うと…」
――光星学院は11年夏から3季連続で甲子園の決勝に進んだのに「東北初の……」みたいな言い方をまったくしなかったんですよね。いやらしい言い方になるかもしれませんけど、もっと世論をつくるような言動があってもいいのになと思ってしまいました。
仲井 2011年は震災もあった年なので、確かに東北勢に風が吹いていました。ただ、それだけに難しいなとも思っていたんです。あんまり東北、東北、って言うと、おまえら東北の選手、ほとんどおらんやんけというアンチも出てくる。そうなると選手たちがかわいそうじゃないですか。
――先日、学法石川の佐々木順一朗さんのところに行ってきたのですが、佐々木さんは仙台育英の監督時代にやはり二度、甲子園の決勝で涙を呑んでいるので「僕は日本人にいちばん好かれるタイプだ」と話していました。「僕は後の人のことを思って優勝を残しておいた。日本人は奥ゆかしい人が好きだから」と。
仲井 僕はどうでしょう……。そういうタイプでもない気がしますけど。
県外出身が多い仙台育英…なぜ応援される?
――仲井さんは「東北勢初優勝」という勲章を仙台育英にとられて、複雑な思いもありましたか。