- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「東洋大黄金世代は“SMAPみたい”だった」…池井戸潤『俺たちの箱根駅伝』を読んだ柏原竜二が「すごくリアル」と驚嘆した描写とは
posted2024/07/17 11:00
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Takuya Sugiyama
「箱根駅伝」を内と外から見続ける柏原さんは、池井戸潤氏最新長編『俺たちの箱根駅伝』をどう読んだか。また、今春からの大学院への進学を発表した彼が、「新たな挑戦」を続ける理由とは――。
ロングインタビュー前編です。<全2回の前編/後編へ>
チームビルディングのリアリティ
――箱根駅伝本選前夜までのチームビルディングの過程を描いた、『俺たちの箱根駅伝』上巻を特に面白く読んでくださったと伺いました。
柏原 今春から入学した東洋大学大学院で、社会心理学を学んでいます。チーム論、組織論との関連も深いので、作中の陸上競技部監督の指導法の違いに心惹かれました。
例えば清和国際大学の北野公一監督。彼のやり方はいわゆる「威嚇」式です。「お前たち、こんなんでいいのか」と理詰めで選手たちを追い込んで、統制する。高校、大学といった場で、規律を重んじてチームを統制するには「威嚇」は即効性があるし、単純で手軽です。それで実際に学生が成長する面もある。
一番手間がかかるのが、コミュニケーションを通してマネジメントする方法。これを実践しているのが、主人公格である明誠学院大学の甲斐真人監督です。目標を明確にして、対話を続ける。その「目標」に異議を唱える学生はいるけど、彼らを排除しない。正直、甲斐監督が掲げた「目標」は現実離れしているんですが、甲斐監督のチームビルディングのやり方、過程がすごく細やかでリアルなので、まったく違和感がないんです。
――甲斐監督は選手たちに「ランナーはクリエイターじゃなきゃダメだ」と教えますね。ランナーとして、このセリフに実感はありますか?
柏原 まさにそうだと思います。甲斐監督は、選手に「最初の10kmは何分以内、15kmに何分……」という目標設定をさせません。彼が教えたのは「ルートを熟知しろ」ということ。ちゃんと自分で考えて、勝負を組み立てろってことなんです。
監督の立場から考えると、一番最悪なのはブレーキがかかること、止まること、タスキがつながらないことの3点です。それを防ぐために、具体的なタイム目標を設定して、それに沿って走るのが安全と思ってしまいがちですが、甲斐監督はそうしない。僕も現役時代は「コースを覚える」派だったので、うまい設定だなと思いました(笑)。
――コースを覚えていらしたんですか?