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「40人中39位」で滑り込み内定…女子ハードル田中佑美(25歳)に見る「モデル挑戦だけじゃない」“五輪戦略”の重要性「標準記録はマストではない」
posted2024/07/15 06:00
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Asami Enomoto
6月末の日本選手権。女子100mハードルで2位に終わった田中佑美(富士通)の言葉が印象的だった。
「私はまだ25歳で、これからも競技を続けますし、(パリ五輪の後にも)オリンピックも来ますし、オリンピックが陸上の全てではない。もっともっと強くなれるように頑張ります」
その発言はパリ行きを諦めたようにも受け取ることができた。
実際、パリ五輪の望みが断たれたわけではなかったが、微妙な状況になっていたのも事実。同時期に世界各地で開催されていた大会の結果次第でどちらに転ぶか分からなかったからだ。
結局、7月2日に世界陸連が公表したオリンピック出場資格者に田中の名前はあった。地獄から天国に駆け上がる思いだっただろう。そして、7月4日には追加で日本代表に内定した。
五輪出場のための「ターゲットナンバー」システム
田中にあのような発言をさせたのは、五輪の出場資格を得るためのシステムがなかなか難解なことにある。
世界陸連(WA)は2019年からワールドランキング制度を導入した。これにより、東京五輪から“参加標準記録を突破すること”と“ワールドランキングでターゲットナンバー(出場枠)に入ること”のいずれかを満たすことが、出場資格を得るための条件となった。
この変更によって、以前に比べて参加標準記録が一気に引き上げられた。パリ五輪の場合、多くの種目で参加標準記録が、日本記録と同等か、それよりも高く設定されている。そのため、ワールドランキングでの出場を目指す選手が増えたように思う。
このワールドランキング制度がなんとも複雑だ。
有効期間内に世界各地で開催される大会で獲得したポイント(「パフォーマンススコア」という)の平均値で順位づけがなされるが、そのパフォーマンススコアは記録スコアと順位スコアとを合わせたもので、順位スコアは大会のカテゴリーによって異なる。
例えば、日本選手権はWAのBカテゴリーだが、5月に開催されたセイコーゴールデングランプリ陸上はAカテゴリーに指定されている。