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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「主人公は、東洋大黄金世代でいえば」…池井戸潤の“箱根駅伝”最新長編を読んだ柏原竜二が「泣きそう」になったシーンとは
posted2024/07/17 11:01
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Hideki Sugiyama
「箱根駅伝」を内と外から見続ける柏原さんは、池井戸潤氏最新長編『俺たちの箱根駅伝』をどう読んだか。また、今春からの大学院への進学を発表した彼が、「新たな挑戦」を続ける理由とは――。
ロングインタビュー後編です。<前編を読む>
池井戸さんはどこで心理学を学んだんだろう?
――『俺箱』の主人公・青葉隼斗くんが「いい仕事をしている」というコメントもいただきました。
柏原 僕が最後まで読んで、泣きそうになったのが隼斗くんのシーン。彼がチームのために果たしている役割は大きくて、いくら甲斐監督が土台を作っても、実際にチームを作り上げる選手たちが乗ってこないと活かされない。隼斗くんは、「キャプテン」という立場から、このチームの「心理的安全性」を作り上げた。その功績は大きいと思います。
隼斗くんは、見ようによってはチームのために働きすぎ、もっと自分個人にフォーカスしてもいいのに、っていうキャプテンで、自己犠牲を払える性格。僕たちのチームで言うと川上(遼平)みたいなタイプ(笑)。でも池井戸さんが彼の働きを意識していて、最後に解放するような筋書きだったのはさすがだな、と思いました。
甲斐監督が議論のための「土台」を作りあげたことや、主務・矢野計図くんが「下の名前で呼び合いませんか?」と提案するところを見ると、このチームは「心理的安全性」を担保させようとしたチームだなと思います。心理学用語で、“オープンなコミュニケーション、失敗への寛容、サポートと尊重、多様性を受け入れている”という4つのことが共有された状態を指します。会社など、組織の中でいかに「心理的安全性」を高めるかということが日夜議論されているわけですが、本書で描かれているチームは、これが非常にうまくいっている。池井戸さんはどこで心理学を学んだんだろう?と不思議に思っています(笑)。
「取材する側」になったからこそ
――本作は「一度は敗れた者」たちの戦いでもあります。柏原さんが現役時代に見ていた風景とは異なる箱根駅伝だったのではないでしょうか?