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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「東洋大黄金世代は“SMAPみたい”だった」…池井戸潤『俺たちの箱根駅伝』を読んだ柏原竜二が「すごくリアル」と驚嘆した描写とは
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/07/17 11:00
「箱根」を代表する山の神、柏原竜二さんは『俺たちの箱根駅伝』をどう読んだのか
柏原 はい。毎晩脳内でレースをシミュレーションしていました。実際の速度で再生すると1時間かかってしまうので、端折りながらですが(笑)。寝る前の布団のなかで、スタートにメガネスーパー、その先にミニストップがあってそこで1km……とか、箱根湯本駅前までちょっと上って平坦になって、そこから函嶺洞門に入る前にまた傾斜があって……とイメージしていました。ただそこに、タイム上の目標はない。
――それは東洋大学・酒井俊幸監督の教えですか?
柏原 いえ、僕の個人的な考えです。他の選手を見ていても、やっぱりいい選手はそれぞれ自分に合うトレーニングをしていましたね。
『俺たちの箱根駅伝』でいえば、甲斐監督が掲げた目標が「チームの目標」。でも、それが個人の目標かと言われるとそうではなく、各々が目指すことがある。チームとして同じ方向性を持つ必要があるときもありますが、特殊区間が得意な人、悪天候が得意な人、レースが得意な人……とたくさんいる中で、自分の良さ、ストロングポイントを活かすというのが大事なんです。
そのためには、みんなで同じ練習をする必要はない。同じ目標――僕たちでいえば「箱根駅伝で優勝する」という共通の目標のために、それぞれに合う方法で練習をするべき。そうすると、指導者も多視点から選手とレースを分析する必要が出てくるので、大変なんです。でもそれを甲斐監督はやったし、酒井監督もやっていたんだと思います。
もちろん選手たちも「あいつだけメニューが違っていいな」という気持ちはありますよね。「特別扱いされてる」とか、やっかみもあるし。
東洋大「黄金世代」はSMAPに近いかな(笑)
――それを乗り越えて、チームとして団結できた秘訣はあるんですか?
柏原 僕たちで言うと、ライバル意識はあるけど、お互いをちゃんと尊重していたのがよかったのかな。毎日、宇野(博之)には負けたくないって思ってたけど、スピードでは勝てる気がしないから、どこで勝負をかけるか戦略を考えたりしてましたね。
毎日一緒に走っているからこそ、彼に合う練習と、動きが悪くなる可能性のある練習も知っている。だから別のメニューをやっても、勝つためには必要なことだと思えるんです。別々のことをやるんだけど、チームとして集まるときはチームとして動く……かつてのSMAPさんみたいな……というとおこがましいですが(笑)。
<後編へ続く>