野ボール横丁BACK NUMBER
大谷翔平のライバルだった“青森の天才”とは何者か? 2人の対決を見た関係者「大坂君の方が有名だった」「決勝で2人ともホームラン」あの怪物は今
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTomoya Osako
posted2024/06/29 11:01
「大谷が衝撃を受けた怪物」大坂智哉の中学野球部時代
大谷が衝撃的な勝利を飾った直後、大坂は優勝候補の一角と言われていた宮城の第一代表、仙台中央リトルを相手に1失点完投勝利を収めている。
決勝戦の目撃者「大坂君の方がすごかったと思う」
そして、いよいよ決勝を迎えた。ただ、両チームともひとつの山は準決勝だと踏んでいた。同大会の上位2チームに残れば、ひとまず全国大会の切符を手にすることができる。両チームともその権利を得ていたこともあり、決勝では大坂も大谷も登板しなかった。
野手として出場した2人は、この試合でともにホームランを記録している。2人のホームランを目撃した福島リトルの佐藤はこう述懐する。
「大谷君はものすごくヘッドスピードが速いというわけではなかったし、引っ張るというよりは反対方向にうまく打つ印象が強かったんです。打球スピードと飛距離でいうなら、大坂君の方がすごかったと思いますよ。通常サイズのフェンスにワンバウンドで到達するぐらい飛んでいましたから」
大谷との出会いを振り返るときの大坂は、決して自分の方が凄かったと誇示するわけではないが、かといって仰ぎ見るような素振りも見せなかった。
なので、一塁ベースで相対した大谷にホームランの数を尋ねたのはライバル心が湧いたからというほどのものではなく、軽い好奇心からだったようだ(本記事「第1回」参照)。大谷のホームラン数を聞いても驚かなかった理由を大坂はこう語る。
「もっと打ってる人、知ってたんで。宮城のチームの1つ年上の先輩だったんですけど、70本ぐらい打ってたんですよ」
リトルリーグにおけるホームラン数はチームが多い宮城や岩手の選手の方が有利だった。そのぶん、年間の試合数も多いからだ。そもそもリトルリーグはフェンスが近いので、力さえあれば割と簡単にホームランは出る。大坂はホームラン数が選手の優劣を示す絶対的指標ではないことにうすうす勘付いてもいた。