- #1
- #2
“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「僕のお父さんは悪役レスラー」“暴走専務”の息子(Jリーガー)が明かす“最強の英才教育”「ヒーローはウルトラマンよりも傷だらけの父」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2024/04/20 11:01
2026年から横浜F・マリノスに加入する筑波大DF諏訪間幸成(3年)。父譲りのフィジカルが特長のセンターバックだ
幸成は小学生になると、幼稚園の頃から習っていたレスリングをやめてサッカーにのめり込んでいった。レスリングでは父譲りの能力を発揮していたが、「(サッカーのほうが)痛くなかったし、みんなでボールを追いかけるのが楽しかった」。それでも父は、地元クラブチームで夢中になってボールを追いかける息子を全力で応援してくれた。
父の思いを受け取ってか、幸成は当時、こんな思いを抱いていたという。
「タックルを受けて『痛い』と思っても、お父さんはもっと激しい技を受けても立ち上がって戦い続けている。そう思うと、弱音なんて吐いていられなかった」
父から受け継いだ闘争心に火がついた。低学年の頃は練習に遅刻したり、サボろうと考えたりすることもあったが、高学年になるとそういった甘えは一切なくなり、誰よりも早くグラウンドでボールを蹴るようになった。
「凶器で殴られて、ありえない針数を縫うほどの傷を負って帰ってきても、負けて帰ってきても、お父さんは『次が大事だ』と休むことなくジムに通っていた。その一方で、食事の時は絶対に一緒に食卓にいたし、食後は僕たちの時間を大事にしてくれた。一緒にも寝てくれた。『好きなことを中途半端にやっていたらダメだ』と背中で教えられている気がしたんです」
幸成は練習が休みの日も公園に行き、一人でボールを蹴り続けた。「みんなが何もしていない時間で差をつけよう」と努力を重ね、見事に横浜F・マリノスジュニアユースのセレクションで合格を勝ち取った。
ただ、父・諏訪魔はこの頃から故障に泣かされ始める。幸成が父から「プロフェッショナル」の本当の意味を教えられるのは、ここからだった。
(後編に続く)