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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「大学で伸びる選手に一番大事なのは…」タイムでも、フォームでもなく…箱根駅伝“古豪チーム”のベテランスカウトは高校生のどこを見る?
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byL)上野さん提供、R)JIJI PRESS
posted2024/01/03 11:01
(左)関東学院大で13年前からスカウトに携わる上野敬裕さん/(右)前回大会、関東学生連合チームで3区を走った内野李彗選手
「高校時代にとにかく練習量で追い込んで、それでなんとか5000m14分台……というような選手だと『なかなか大学でやるのは厳しいのかな』というシビアな側面もありますから」
5000m15分55秒がベストタイムの選手にも声掛け
逆に言えば、そこまで記録を持っていなくても、走りのフォームや平時の取り組みを見て、「これは」と思えば声をかけることもあるということになる。
「以前には5000mで15分55秒のレースを見てスカウトしましたが『何でこんな選手に声をかけるの?』『もっと上の記録を持った選手に行った方がいいんじゃない?』と反対されたこともありました(笑)。
ただ、その子は動きが抜群に良かったので、僕はもう絶対的な自信があった。高校の先生もびっくりされていましたけど、そういうニッチなとこに行かないと、箱根路に出ていない大学はなかなか選手が取れないんです。もちろんこれは極端な例で、基本的には5000mで14分台がひとつの基準になってきますし、箱根常連校なら14分30秒という記録がひとつの目安になるとは思います」
結果的にその彼は1万mで29分33秒という記録を出すほどに成長。チームのキャプテンも務めて卒業していったそうだ。
「あとは大学で伸びる選手の共通点がひとつあるんです。それは『関東学院大で走りたい』とか、『この大学のスタッフに指導してもらいたい』という思いが強いこと。これはどこの大学も一緒だと思いますが、『自分はこの大学で走るんだ!』という思いをちゃんと選手が持っているかどうかは、間違いなく成長に影響します。どんなにタイムを持っていても『来てやった』という考えで入学する子や、方針的に自分の心からの希望でないチームに入ると、伸び悩みやすい傾向はあると思います。
僕は結構、SNS等でも指導方針などを積極的に発信している方ですが、そういうものをちゃんと見て、お互いの想いが一致した状態で入学できると、やっぱり順応が早い。トレーニングのミスマッチも減る。そうなると記録も伸びていきやすいですね」
だからこそ、時折スカウトとして残念なことがあるという。