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「100円均一やめるぞ」に反対の声も…ローソンストア100社長(東大野球部出身)を悩ます“安売りを愛する日本人”問題「赤字続きで苦戦してきた」
posted2023/11/26 17:27
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph by
AFLO
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東大野球部在籍中の4年間、平成以降では最多となる18もの勝利をあじわった幸せな男・佐藤隆史(1999年卒業・浦和・49歳)は、大学卒業後は三菱商事に進んだ。JALとの折半出資案件では、大きな環境変化に翻弄され、ベンチャー企業への投資案件を管理する部門では、撤退も経験。ビジネスのシビアさを学んできた佐藤は、2017年にローソンに出向すると、その子会社のローソンストア100のテコ入れに手を挙げた。
「当初は社長になることなど想像もしていなかった」という佐藤だが、2017年8月には早くもローソンストア100の上級執行役員に就き、2018年5月には取締役、2019年3月に社長に就任。佐藤は100円均一チェーンのダイソーに3年間出向していた経験があり、事業立て直しにはうってつけの人材だったのだろう。
コンビニ業界の3強が万単位の店舗数を誇るのに対し、ローソンストア100は、たったの649(2023年9月末現在)。東京六大学にたとえるなら、まさしくコンビニ業界の東大と言えるかもしれない。現役当時の東大野球部監督に「堅守巧打の俊足のショート」と讃えられた佐藤は、どうやって勝ちを描くのか。
「100円均一からの転換」は本当に難しい
佐藤が社長として直面した最大のハードルは、店舗コンセプトの自己否定でもある「100円均一からの転換」だ。
「昨年から一気に物価が上がってきましたが、私が社長に就任した2019年当時も、既に事業活動を取り巻くあらゆるコストの上昇が進んでおり、100円で継続できないことは明白でした。また、特に価格感度の高い食品カテゴリでは100円一本で利益を出すというのはかなり厳しい。しかし、お客様は100円を期待しているわけですから、簡単に100円以外にするとあっという間にそっぽを向かれてしまうリスクも高い。更に加盟店のオーナーさんも“100円”に魅力を感じてFC加盟してくれている方もいらっしゃいます。社員だって100円で長く仕事をしているメンバーばかりで、チェーン全体に“100円”が身も心も染みついていました。ビジネスは“マインド”も非常に重要な要素ですから、“真の脱100円”は本当に難しいです」