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「100円均一やめるぞ」に反対の声も…ローソンストア100社長(東大野球部出身)を悩ます“安売りを愛する日本人”問題「赤字続きで苦戦してきた」
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byAFLO
posted2023/11/26 17:27
ローソンストア100。東大野球部出身の佐藤隆史(1999年卒業・浦和・49歳)が代表取締役社長を務める
「フランチャイズオーナー、クルーの皆さんや社員の皆さんは商売が大好きで、お客様との心理的な距離感も非常に近い。私が当社の業態になぜ可能性を感じているかというと、今のコンビニでは超えられないラインを超えて、お客様の生活にグッと近づけるからです。事業基盤の安定化にはまだ距離がありますが、コロナ禍を抜けて“脱100円”もようやく現実的になってきました。学生時代の部活動と仕事は一緒にはできませんが、部活動で汗を流したチームメイトと同じように、苦しいコロナ禍を含めて共に戦ってきた加盟店オーナー、クルーの皆さんや社員の皆さんは同志だと思っています。彼らと共に、お客様に向き合うローソンストア100のビジネスは非常にやりがいがあり、そして今までの人生の中で一番難しい仕事です」
そのように、苦しみ抜きながら同社の舵を取る佐藤は、社会人人生と東大野球部をこう重ねる。
「東大時代は弱小チームでありながら、スター選手揃いの強豪とどう戦うかを、ずっと考えていました。三菱商事は大きな会社ですが、そのなかで私が携わってきた仕事は、小さい規模の事業をどうやって大きくしていくかというものです。そういう意味では、自分たちのポテンシャルをいかに最大化して、強く大きな相手に挑んでいくか、という考え方は東大時代と同じ。常に“挑戦”を考えている人生ともいえると思います」
「飛ばされて、帰ってこれないかもな」
三菱商事から関連会社の社長になることは、どういう意味を持つのか。ここからは再び、佐藤のはるか先輩の東大野球部OBである榊田雅和(1981年卒業・横手高・65歳)の話をしよう。榊田は大学卒業後に三菱商事に進み、製鉄プラント部門ひと筋でキャリアを重ねた人物だ。
世界を相手に奮闘していた榊田に対し、2013年、インド三菱商事の社長のポストへ声がかかる。54歳だった。
三菱商事の人事において、海外現地法人の社長を務めることは、将来的に本社の役員に就くひとつの通過点なのだそう。いわゆる出世コースだ。海外法人や関連企業の社長になり、本業務とは別次元の仕事である会社のマネジメント方法を学んでこい、というわけだ。そうした“修行”を終えたのちに本社へ戻される。