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「100円均一やめるぞ」に反対の声も…ローソンストア100社長(東大野球部出身)を悩ます“安売りを愛する日本人”問題「赤字続きで苦戦してきた」
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byAFLO
posted2023/11/26 17:27
ローソンストア100。東大野球部出身の佐藤隆史(1999年卒業・浦和・49歳)が代表取締役社長を務める
「ただ、そのルートに乗っても役員になれない人は半分以上います。私もインドに行ったときは、出世コースに乗ったという安堵感はなく、『飛ばされて、帰ってこれないかもな』という不安でいっぱいでした。実際にそういう人をたくさん見ていますからね。出世したことを実感したのは、インドから帰ってきて常務になったときです。あ、おれもなんだかちょっとは偉くなったなと思いました」
“2100億円の赤字”も…「社長就任は断っていました」
2017年に帰国して三菱商事の常務になった榊田は、本社の経営に携わりながら、62歳の定年までベストを尽くすべく奮闘した。その後は、どこかに再就職するのか、ボランティアでもやるのか、毎日野球かゴルフか……などとぼんやり考えることはあっても、身の振り方については、まったくのノーアイデアだったという。
そこへ、千代田化工建設(東証スタンダード/プラント建設大手)のトップ就任のオファーが来た。折しも、アメリカでの液化天然ガス(LNG)プラントの工事を受注していた同社は、現地労働者の人件費が高騰して巨額の損失が判明し、2019年の決算で2100億円の赤字を計上。三菱商事の財務支援を受け、経営立て直しに向けた5カ年計画を掲げて再スタートしていた。この関連会社を引き受けるのは、火中の栗を拾うのに近く、本社役員の定年を目前にした身にとっては、けっして楽なことではない。
「千代田化工建設の状況はもちろん知っていました。ただ、三菱商事のプラント畑で私とは長い付き合いの優秀な先輩が会長兼CEOとして頑張っておられましたから、当分、私には声はかからないだろうと油断していたんです。ところが、その先輩から『次は、きみがやってくれ』と言われてしまった。悩んだし、断り続けましたね。私には荷が重いだろうと。自分には務まらないと感じていました」
「社員を不幸にしてはいけない」
しかし、最後は三菱商事のトップから声がかかった。もう逃げられなかった。