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「100円均一やめるぞ」に反対の声も…ローソンストア100社長(東大野球部出身)を悩ます“安売りを愛する日本人”問題「赤字続きで苦戦してきた」
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byAFLO
posted2023/11/26 17:27
ローソンストア100。東大野球部出身の佐藤隆史(1999年卒業・浦和・49歳)が代表取締役社長を務める
ローソンストア100は、かつて小平から始まったSHOP99(99円均一ストア)をローソンが買収し、元々ローソンが立ち上げて運営していたバリューローソン事業と統合してできた会社だ。だが、99円や100円均一の小売店は、デフレ下を象徴するビジネスモデルであり、コスト上昇局面において収益は圧迫される。これではもう儲からないという問題意識はローソンにもあり、2014年にローソンマートという、価格を引き上げた「コンビニ発のミニスーパー業態」への転換を模索。しかし、この事業はうまくいかずに2年も経たずに撤退するに至った。理由はまさに佐藤の言葉の通りだろう。
「均一の良さは、お客様が売り場で値段を考えないで済むこと。『これ食べたいけど、128円。こっちは2番目に食べたいけど、100円。どっちにしようかな』とお客様が商品の『中身』と『価格』の2軸を考えて売場で悩んで比較するのでなく、価格一定の下で自分の本能に従って商品を手に取るという『選びやすさ』、買い物かごにポンポン商品を入れやすい『お買い得感』が“100円均一”の強みなんです」
「100円やめるぞ」「どういうことですか?」
かくして、手痛い傷を負って再び100円に回帰していたローソンストア100に、100円の良さを知りつつも値上げのミッションを背負って登板したのが佐藤なのである。
「加盟店のオーナーさんの中にも、10年以上もローソンストア100で商売をされている方もいるし、ローソンマートを経験されている方もいる。そこにぽっと出の社長が、いきなり『100円やめるぞ!』と言ったら、やはり『どういうことですか?』の声があちこちのお店から返ってくるわけです。ですから、伝え方とタイミングはすごく重要ですし、100円以外の商品を販売するためのチェーンとしてのノウハウ蓄積も不可欠。自身の経験もあるので、100円という価格の意味と魅力は身に染みて分かっていることはずっと話してきました。その上で、100円以外のものでも正しいやり方をすれば売れると説明し、ブレない方針を理解してもらう努力を今でも続けています」
ローソンストア100は、大手コンビニと違って生鮮食品があるため、消費者の生活により密着している点が強みだ。これを佐藤は、「冷蔵庫代わりに使えるような、献立応援コンビニ」と定義し、既存のコンビニとは違う便利さを提供したいと考えている。
「いち消費者の視線から見ると、一番近いコンビニを目指して『あ、お腹空いたな。あのコンビニ行こう』って感じだと思います。でもうちの場合は、『ローソンストア100に行こう』となってもらえる。ローソンストア100は、住宅地立地の店舗も多く、お客様の近くにあって冷蔵庫代わりにして365日生活できるというチェーンです。想像してみてください。普通のコンビニで毎日3食、1年間食生活を続けられますか? 当然、お金も続かないでしょうし、生鮮、調理素材や調味料などの品揃えも多くありません」
東大野球部とサラリーマンの似ている点
その点、ローソンストア100の値付けは財布に優しいし、日常の食生活をほとんどカバーできる。佐藤はそう言って胸を張る。