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「ニッポンはエキデン中心になっている」アメリカの指導者は日本の長距離界をどう見ている?「ハーフマラソン向きの大卒ランナーが多い」 

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齋藤裕(NumberWeb編集部)

齋藤裕(NumberWeb編集部)Yu Saitou

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photograph byYuki Suenaga

posted2023/11/05 06:01

「ニッポンはエキデン中心になっている」アメリカの指導者は日本の長距離界をどう見ている?「ハーフマラソン向きの大卒ランナーが多い」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

日本では秋から冬にかけての風物詩になっている駅伝競走。マラソンもよく知るアメリカ人監督の目に駅伝はどう映っているのか。

「これは僕の限られた視点からの意見だということを前提に聞いてほしいのですが、大学を卒業しても、優秀なランナーの多くは実業団などでエキデンに取り組むこととなる。これには、大きく注目を集め、お金も集まり、金銭的なインセンティブ(報酬)もある『エキデン』を目標に走らざるをえないという事情もあると思うんです。そういう競走体系になっているから、ランナーもエキデンを走りたいと思って、そこに向かっていくところはあるんじゃないかなと。
 アメリカだと“Follow the money”みたいな言い方をするのですが、やはり市場経済が成り立っていたり、お金があったりするところに人もモノも集まる。やはり仕事やプロとしてやるとなると、そういう側面も当然無視できない。それが悪いとかではなく、それぞれの国の形があるものだと思います。例えば、“マラソン中心”型の国もあれば、“トラック中心”型の国もある。それが日本の場合、エキデンが中心となって選手を成長させて発展してきたのかなとは思っています」

フルツ監督が驚いた青学大の姿勢

 フルツ監督がエキデンを肯定的に捉えるのはその経験も大きい。2000年代半ばには山梨学院大学の上田誠仁監督と共同練習を山梨で行い、整った環境に目を見張った。そして2017年、青山学院大とも交流合宿を行った。

「学生に翻訳機が渡されて、国際会議さながらの設備でびっくりしました。もちろん環境も良かったけど、一番驚いたのは、彼らの学ぶ姿勢でしょうか。『これはアメリカではどうですか?』などと熱心に聞いてくる。彼らはハコネの3連覇とトリプルクラウン(大学駅伝三冠)をやってのけていて、私から何も学ぶ必要なんてないはず(笑)。でも、学び取ろうと質問をする姿に意識の高さを感じました」

フルツ監督が言及した“あるトレーニング”

 現役時代は1976年のボストンマラソンを優勝し、五輪代表の選考レースにも3度出場資格を得たフルツ監督。彼から見て、駅伝に大きな注目が集まる大学の長距離界について改善すべき点など感じたことはあるのだろうか? 本人に問うと、「そんなにないと思うな」と微笑みながら、“あるトレーニング”について口にした。

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