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「タイムは最強」アメリカ名門大学チームは、なぜ駅伝で苦戦する? アイビーリーグ選抜監督に聞いた敗因「招待いただいたのに…悔しすぎる」

posted2023/11/05 06:00

 
「タイムは最強」アメリカ名門大学チームは、なぜ駅伝で苦戦する? アイビーリーグ選抜監督に聞いた敗因「招待いただいたのに…悔しすぎる」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

これまで計23回、出雲駅伝に参戦してきたアイビーリーグ選抜。ベスト記録は日本選手を上回るが、なぜ苦戦が続くのか。監督に聞いた

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齋藤裕(NumberWeb編集部)

齋藤裕(NumberWeb編集部)Yu Saitou

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Nanae Suzuki

「今年のアメリカ大学チームは史上最強の選手が集まっているらしい」
 
 最終決戦・箱根駅伝へと続く三大駅伝の最初の一冠、出雲駅伝。コロナ禍を経て、4年ぶりの参加となったアイビーリーグ選抜の出場選手リストが話題になった。

「アイビーリーグ」とはアメリカの北東部にある名門私立8大学を指す総称で、ハーバード、コロンビア、イェールなど世界各国の秀才が集まる難関校が名を連ねている。そんな文武両道軍団の中でも目立つのが、東京五輪10000m代表にも選ばれたキーラン・トゥンティベイト(ハーバード大)。10000mベスト記録は27分17秒14と日本記録の27分18秒75よりも速い。彼を筆頭に27分台と28分台の選手が集結するチームの10000m平均は28分29秒47。これは優勝した駒澤大学のエントリー選手平均29分04秒21を大きく上回る数字で、トラックの速さに定評がある中央大学(28分35秒61、日本勢最速)よりも速いタイムだ。

 しかし、結果は13位。過去の大会でも好タイムを持つランナーが来日してきたが、最高順位は8位にとどまっている。ベストタイムからすれば“苦戦”という印象があるが、なぜなのか。アイビーリーグ選抜の監督に聞いた。(全2回の第1回/#2に続く)

不振に終わったひとつの要因は「主力のケガ」

「たしかに理論上は表彰台に入ってもおかしくない実力はあったと思います。ただ、タイム通りにいかなかった一因として主力選手のケガがありました」

 神妙な表情でそう語るのはジャック・フルツ監督。自身も長距離の選手として1976年のボストンマラソンを制すなど活躍を見せ、コーチとして数多くの選手を指導。90年代からアイビーリーグ選抜を率い、20年以上にわたって出雲駅伝に出場してきたベテラン監督だ。矍鑠(かくしゃく)とした75歳が言葉を継ぐ。

「タイにルーツを持つキーランは9月に中国で行われたアジア大会10000mに出場した際、ケガをしてしまったんです。彼を長距離区間の3区(8.5km)に配置する予定でしたので、誤算でした。計画をすべて練り直しました。彼が出ていれば、その区間で2分ほど速い計算でした。ただ、それがあっても順位としては11位。力不足は否めません」

実は選手たちのほとんどは…

 日本記録超えのエースがまさかの離脱。しかし、その力があっても目標には届いていなかったという。これは何か構造的な要因がありそうだ。

【次ページ】 タイム自体は嘘偽りないが、ベスト・シェイプではない

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