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岡田阪神“常勝軍団”へのヒントは中野拓夢と大竹耕太郎にアリ? 「ポジションに聖域なし」「『飼い殺し』はトレード転換」…納得の方針を貫けるか
posted2023/10/30 11:03
text by
江本孟紀Takenori Emoto
photograph by
(左)Naoya Sanuki/(右)JIJI PRESS
日本シリーズ真っ最中の現在だが、今季、阪神タイガースは18年ぶり6回目のセ・リーグ優勝を果たした。同球団のOBで野球解説者の江本孟紀さんは岡田彰布監督がチームにもたらした数々の「変化」が優勝を呼び込んだという。では今後の阪神はその強さを維持していけるのだろうか? そのキーポイントを、江本さんの『阪神タイガースぶっちゃけ話 岡田阪神激闘篇 猛虎の「アレ」を10倍楽しく見る方法』(清談社publico)から転載して紹介する。〈全3回の#3/#1、#2へ〉
岡田監督の采配を見ていて感じるのは、「特定の選手に聖域をつくること」をせず、すべての選手の適性を評価した結果、納得の布陣を敷いているように思える。
2022年の秋季キャンプで、それまで遊撃を守っていた中野拓夢を二塁にコンバートした。中野の肩の強さや捕球してからの一連の流れを岡田監督自身が見て、「ショートよりセカンドのほうがいい」と判断したからであるが、これは正解だった。守備による負担が減ったこともあってか、打撃面でも成長し、春には第5回WBCの日本代表、さらにはオールスターに選ばれるまでになった。このコンバートは高く評価していい。
「腐らずに努力した結果」が成果につながる好循環
一方で、2021年シーズンまで二塁のレギュラーだった糸原健斗はベンチを温める日が多くなった。たしかに、彼の打撃技術は捨てがたいものの、守備には難があった。それでも、矢野前監督時代は多少の守備のミスには目をつぶり、打撃を優先してスタメンで起用していたが、岡田監督はそれをよしとしなかった。「守備のいい者を優先して使う」と中野を二塁にコンバートし、入団4年目の小幡竜平の安定した送球と高い身体能力を生かした守備範囲の広さを評価して遊撃のレギュラーとして起用した。
小幡からレギュラーの座を奪った入団5年目の木浪聖也は、入団1年目こそ113試合いに出場したものの、2022年のシーズンはケガなどの出遅れによって41試合の出場にとどまった。だが、岡田はその肩の強さと勝負強い打撃を評価し、小幡に代えて遊撃のレギュラーの座を与えた。腐らずに努力した結果が活躍につながっていると見ていい。