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「阪神最後の試合は感慨深かった?」「全然!」…虎の歴史で振り返る《“大阪の水”合う人、合わない人》最もフィットしたのはあの“闘将”?
posted2023/10/30 11:02
text by
江本孟紀Takenori Emoto
photograph by
JIJI PRESS
日本シリーズ真っ最中の現在だが、今季、阪神タイガースは18年ぶり6回目のセ・リーグ優勝を果たした。同球団のOBで野球解説者の江本孟紀さんは岡田彰布監督がチームにもたらした数々の「変化」が優勝を呼び込んだという。
過去を振り返ってみれば、人気球団である阪神では岡田監督のようにその”水”にあった人もいれば、なかなかうまくチームにフィットしなかった人もいた。その一例を江本さんの『阪神タイガースぶっちゃけ話 岡田阪神激闘篇 猛虎の「アレ」を10倍楽しく見る方法』(清談社publico)から転載して紹介する。〈全3回の#2/#1、#3へ〉
2020年暮れの話だが、ロッテに移籍した鳥谷敬とオリックスに移籍が決まった能見篤史が大阪のテレビ番組に出演して阪神にまつわる話をしていたときのこと。司会進行役を務めた阪神OBの狩野恵輔の「阪神で最後の試合は感慨深いものがあったか?」という問いに、二人が「全然」と話していたシーンが、一部の阪神ファンのあいだで話題になった。
さらに話は続き、なんとか場を取り繕おうとした狩野が二人に別の話をすると、能見は阪神ファンにやめてほしいこととして、
「相手ピッチャーが降板したら『蛍の光』を歌うのはやめてほしい。あんなのは聞いていて気分がよくない」
と真顔で言ったのだ。そう言いたくなる能見の気持ちもわからなくはない。同時に、私は鳥谷と能見の話を聞いて、「長いこと阪神でプレーしていたけど、きっと『大阪の水が合わなかった』んだな」と感じた。
当たり前だが、ドラフトで指名される選手は全国津々浦々の出身者である。そのなかで、阪神の水に合う選手もいれば、合わない選手もいる。これは環境や人間関係など、さまざまな要因が複合してできるのでいたしかたのないところであるが、一度「合わない」ことが露呈すると、ストレスに思うことが増大し、あるときを境に不満が爆発する―― そんなことだって大いにありうる。
また、トレードなどで阪神から放出されて他球団で現役を終えることになった選手は「大阪とは縁がなかった」ということになる。
過去をたどれば、田淵(幸一)さんや江夏(豊)、加藤博一、前出の松永(浩美)や野田(浩司)、新庄(剛志)、最近でいえばFAで阪神に来た新井(貴浩)、同じ制度を使ってDeNAに移籍した大和、トレードで西武に移籍した榎田大樹、鳥谷や能見と同じく阪神を出てロッテで現役をまっとうした今岡(誠)……挙げればキリがないが、阪神を出て戻らなかった人はこれに当てはまる(今岡は指導者として戻ったが、一時期はロッテに行っていた)。