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WBC代表・湯浅京己に「もう投げさせへんよ」…藤浪晋太郎も罹った“阪神病”を許さなかった岡田監督の英断《OBエモやんが考える》岡田阪神“強さのワケ”
posted2023/10/30 11:01
text by
江本孟紀Takenori Emoto
photograph by
Hideki Sugiyama
一方で、開幕前の高い評価に応えられなかった選手がいる。その筆頭格が第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも選出された湯浅京己である。
湯浅は2022年に最優秀中継ぎのタイトルを獲得したものの、もともと故障が多い選手だった。それがわずか1年大ブレークしたことで、「今年の抑えは湯浅で決まり」と気の早いメディアはこぞって持ち上げた。
そこにきてWBC選出である。聖光学院時代は控えで、独立リーグ出身の彼をまるで時代のヒーローであるかのような評価をしたことで、湯浅は「オレはすごい」と半ば勘違いしてしまったところがある。
「たかだか1年活躍した程度で天狗になるな」
それを象徴する出来事が6月3日の甲子園での千葉ロッテマリーンズ戦で起こった。3点リードの九回に登板するも、先頭打者のショートゴロをエラーという不運なかたちで出塁させると、一死一、二塁から連続タイムリーを打たれて同点に追いつかれた。後続はなんとか抑えたものの、湯浅はマウンドから降りる際に帽子をグラウンドに叩たたきつけた。
私はこの光景を見て即座に「10年早い」と思った。もちろん、ほめられた行為ではないし、「やるならベンチ裏でやれ」と言いたいところだ。
だが、それ以上に、「たかだか1年活躍した程度で天狗になるな」という気持ちのほうが強かった。
プロの世界で1年だけ活躍した選手はゴマンといる。だが、難しいのは、2年、3年、5年と継続して結果を残せることだ。それができて初めて一軍選手として認められる。だが、湯浅本人は、残念ながら自身が「青二才の選手である」という自覚が足りなかった。おそらく中継ぎのタイトルを獲得してWBCに選出されたことで、「オレは一流選手の仲間入りを果たした」と大きな勘違いをしてしまったのだろう。