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岡田阪神“常勝軍団”へのヒントは中野拓夢と大竹耕太郎にアリ? 「ポジションに聖域なし」「『飼い殺し』はトレード転換」…納得の方針を貫けるか
text by
江本孟紀Takenori Emoto
photograph by(左)Naoya Sanuki/(右)JIJI PRESS
posted2023/10/30 11:03
WBCにも出場した中野拓夢は今季からセカンドにコンバート。現役ドラフトでソフトバンクから移籍の大竹耕太郎は12勝の大活躍
私はこうしたトレードは大賛成だ。選手によっては「彼はパ・リーグの球団には向いていないけど、セ・リーグ向きなんじゃないか」というタイプもいるし、逆もまたしかりである。このことは大竹が証明してくれたわけだが、私は彼にかぎった話ではなく、ほかの球団にも、こうした選手は、いまも埋もれているんじゃないかと見ている。
プロの球団にドラフトで指名されるということは、スカウトから高い技術と能力を評価されたからにほかならない。だが、そうして獲得した選手が、「じつはセ・リーグよりパ・リーグのほうが向いている」なんてことはザラにあるし、そうなったら、トレードでもしなければ、その選手が生きる道はない。
また、獲得した球団が所属するリーグ向きではあるものの、首脳陣とソリが合わずに埋もれてしまったり、同じポジションに高い能力を持ったライバルがいたりするために一軍で活躍の場が与えられない選手もいる。細川の場合は後者だったわけだが、こうした選手は、言葉は悪いが、戦力が劣るチームに移籍させたほうが活躍できる可能性が広がるということが十分にありうる。細川はまさにその好例といえるだろう。
積極的なトレードの活用が”常勝”を生む?
だからこそ思う。いま、二軍に埋もれてしまっている選手は、現役ドラフトという機会でなくても、積極的にトレードに出すべきだ。キャンプ、オープン戦、そしてシーズンインしていけば、おのずと足りないピースが目に見えてくる。もともと足りないと思われていたことがシーズンに入ってさらに露呈するケースもあれば、主力選手がケガで離脱して突如としてコマ不足に陥ってしまうケースだってある。そんなときにトレードを活用しない手はなかろうというわけだ。
阪神のライバルチームである巨人は、中継ぎが炎上しまくっていると見るや、若手の有望株のひとりと見なされていた廣岡大志をオリックスに放出し、投手の鈴木康平(オリックス時代はK‐鈴木)を獲得。また、石川慎吾をロッテに放出し、一軍で実績がない投手の小沼健太を獲得した。廣岡、鈴木、石川は、それぞれ新天地で結果を出し、一軍になくてはならないピースとして活躍している。
彼らが所属していた球団が「いち野球人として大成してほしい」と考えることは大切なことだ。そこには「よそで活躍したらどうしよう」という打算はいっさい抜きにして「選手個人が幸せになるトレードはないか」を第一に考えること。これからのプロ野球界は、そうした組織に変わっていく必要があるのではないだろうか。